『ウィンナーホルンの音響学的検証（4. 形状(Mensur)）その１』4. 形状(Mensur) 管楽器の場合、「メンスール(Mensur:独)」（≒ Bor：英）という用語は通常、楽器の長さに対する内径の変化を指します。 …

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Mensur（径の大きさと形状）が音に与える影響

　すべての金管楽器の音は、演奏されるダイナミクス (音量) にある程度依存します。音が大きいほど、つまり、楽器の定在波の振幅が大きいほど、倍音が多くなります。

ウィンナホルンは内径が小さいため、ダブルホルンに比べて管の内側で生じる摩擦損失が大きくなります。さらに、ウィーンホルンでは管が長いため、より多くの空気を動かす必要があります。どちらも、ダブルホルンと同じ強さの定在波を生成するために、ウィーンホルンでより高いエネルギーの供給を必要とします。

どうすればより多くのエネルギーを得ることができるのでしょうか？一方では口腔内の空気圧を上げ、他方では唇の隙間を広げるだけで、より多くの空気が同時にマウスピースに押し込まれます。しかしながら、唇の隙間のサイズ、すなわち空気がマウスピースに流れ込む断面積は、マウスピースの縁によって制限されます。

唇の隙間が可能な限り最大の断面積に達しているにもかかわらず、ホルン奏者が周波数を一定に保つために空気圧を上げ続け、リップの張力を一定に保つと、演奏者がもはやそれを維持できないという効果が発生します。唇の開閉が速くなるため、唇の隙間が最大に開いている時間が長くなり、その時間を長くしなくても、同じ時間単位でより多くの空気（＝エネルギー）がマウスピースに流れ込みます。

図 16 は、この効果を示しています。

図16
ピアノでの経時的な唇の隙間の開き（＝空気量）フォルテシモ (左) と結果のサウンドスペクトル (右)

通常の場合、時間の経過に伴う唇の開口部または断面積の変化、したがってマウスピースに流入する空気の量は、より正弦曲線に対応し、2番目のケースではより長方形の曲線に対応します。

両方の曲線に含まれる部分的な振動を計算すると、長方形の曲線にはかなり多くの倍音が含まれていることがわかります。つまり、より明るくシャープに聞こえます。

さらに、すべての金管楽器に共通して高い音圧レベルで発生し、上記の影響をさらに強める「衝撃波」の影響があります。

ラウドネス、可聴性、隠蔽性

ウィーンホルンのクレッシェンドでは、スケールが狭く、管の長さが長いため、摩擦損失が大きくなるため、世界中で使用されているダブルホルンよりも「真鍮感」の効果が早く現れます。音楽におけるフォルテシモの印象は、主に音量レベルではなく音のスペクトルに依存するため、ウィーンホルンでは、客観的に低い音量レベルでもフォルテシモの印象が生じることを意味します。
これはまた、ウィーンの楽器のフォルテシモは、一般的な金管楽器のフォルテシモに比べて、他の楽器を圧倒するようなことはありません。
たとえば、ダブルホルンのあるオーケストラが演奏するブルックナーの交響曲の有名なフォルテシモの冒頭ではっきりと見ることができます。金管楽器の音で、バイオリンをはじめとする弦楽器の音は完全かき消されます。とはいえ、これはライブコンサートでのみ観察できます。スタジオ録音では、適切なマイクで弦を持ち上げて、聞こえるようにするのが一般的です.

図 17
フォルテッシモの c" 表記のサウンドスペクトル、ウィーンホルン (管長 3.7m、上) とダブルホルンの高 F ホーンセクション (管長 1.85m、下) を同じ音量 (100dß) で使用

ただし、これらのホルンタイプ間の音色の違いは、大音量(フォルテ、フォルテシモ)でのみ見られます。ピアノとメゾフォルテでは、これらの効果は機能しません。ウィンナホルンとダブルホルンの音に違いはありません。
　実音量と感じる音量については、上記のとおりですが音質という意味では、二種のホルンが同じなのはピアノの音色のみです。
メゾフォルテでもウィーンホルンはパーシャルがやや多めで、ボリューム感は十分ではありませんが、よりボーカル感のある音になり、一方、フォルテとフォルティシモでは、ウィーンアワーズのサウンドは、ダブルホルンの音よりもスケールが狭く、管がはるかに長いため、非常に明るく、倍音が豊かです。

一方、ダブルホーンの F-ホルンセクションは、スケールが広いため、すべてのダイナミックレンジで「基本的な」サウンドを提供するため、「ソフト」と認識されます。
　倍音の豊かさの違いは、図17のサウンド・スペクトルで明確に見ることができます。
　フォルテッシモのc"の表記を示しており、上はウィンナホルン(管長3.7m)で、下はダブル（トリプル）ホルンのディスカントFのセクション(管長1.85m)で同じ音量(デシベル)で演奏されています。

図 18
ウィーンホルンとダブルホルンのg'、c"、e"の記譜音の違い。
縦軸：回帰係数[ - ] k. 中音域と高音域に違いがあります。

　図18が示すように、ウィーンで製造された楽器と海外 (ドイツと日本) で製造された楽器の間には特徴的な違いさえあります。
この図は、線形回帰を使用して、トーン g'、c"、および e" (F管で移調表記) の定常範囲で統計的に決定された音の差を示しています。
総勢130名のホルン奏者（全員男性）の音色を素材に使用。
線は、サウンドスペクトルの基音と比較して高い倍音の「低下」を表しています。
ウィンナホルンでは、減衰が少なくなります。つまり、同じサウンド・レベルで高い倍音がより多く、より強くなるということです。
　また、高音は大きく、低音は小さくなっていることが分かります。

つづく

ウィンナーホルンの音響学的検証（4. 形状(Mensur)）その2