__時々、そう、ふとした瞬間。
君は今泣いているんじゃないかって心配になる。
それは、学生の時もそうだったけど大人になってある程度の社会の常識がわかってきた今でも。
僕の思い込み過ぎだって、よくさくらさんには言われてるけど....なんだか心配です。
“悪い霊がすぐそばにきている”と口実付けて君に会いに行こうとしたのは夕方の5時ぐらいだった。
しかし、未来さんの住んでるアパートは鍵は空いたままで誰も居ない。
どこか出かけたのか、彼女の無防備さに飽き飽きしながらも近所を探して見ることにした。
「まさか本当に、悪い霊に襲われたんじゃ...」
焦りと不安が自分に襲いかかってきた頃。
探すこと10分、ようやく君の姿を見つけて心から安心する。
でも、肝心の彼女の姿は
「ふぇっ、ぐず.....」
やっぱり泣いていた。
来てよかった、とまたため息をつく。
「.....未来さん?」
「__...ぅわぁっっ!びっくりした!肩叩くぐらいしてよ!」
未来さんの瞳から流れる水滴をそっと親指でなぞる。
「何か辛いことでもあったのですか?言いたいことがあるなら....」
「ちっ、ちがうの!全然そういうのじゃなくて!
......この曲聴いて泣いてたの!」
イヤホンが未来さんの耳から外されて、僕の片耳につけられると流れて来るのは、笛の音。
どこか懐かしいような、切ないような。
この夕日に似合うような曲だった。
「ふふ、良いでしょ、この曲。」
「何ですか?これは....」
「曲名は忘れちゃったんだけどね。昔お兄ちゃんがこの曲好きでよくこの公園で聴いてたの。
で、今日家にいたら偶然この曲のCD見つけて、急いでウォークマンに入れて聴いてたら....」
えへへっ。って君は照れ笑いをしながら答えた。
確かに。いい曲ですけど....
「.....未来さんに説教することが2つあります。」
「うえっ!いきなり!?」
「1つ目、出かける時には鍵をかけて言ってください。強盗でも入ったらどうするつもりだったんですか。」
「あ....ごめん。以後気を付けます。」
「二つ目は...」
その理由が、内心未来さんらしいなぁと笑いながらも冷静を保つようにその身を抱き寄せた。
真っ赤になりながらも嫌とは言わない未来さん。
「二つ目は、もう一人で泣かないで下さい。」
「りょ....」
「これから泣くときは二人で一緒にいるときです。
どんなことでもいいから、僕を呼んで。未来さんの涙は僕が全部受け止めます。」
「.....今日みたいな、つまらないことでも?映画を見て泣くときも?
あたし、酒癖わるいよ?」
「ふふ、知ってます。」
恥ずかしいこと言ったからか、太陽が真っ赤になってオレンジの風景を作っているからか、お互いの顔が少し赤い。
そういえば顔が近かったんだなぁ...。と、未来さんを見下ろすことにも慣れて。
そんな呑気なことを考えてるうちに
唇には感触と耳にはチュッとリップ音が聞こえた。
「....随分積極的になりましたね。」
「そぉ?陵が消極的になっただけじゃない?」
半分嬉しそうな、半分僕をバカにしたような笑顔の未来さんの手を握り絞めて歩く。
好き、
___この気持ちは君も同じかな?
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思いっきり関係無い話になりますけど(^o^;)
未来が聴いていた曲は「黄色い村の門」という曲です(・∀・)
私達の学校の吹奏楽コンクール自由曲のなかに入っている曲でもあって、すごく素敵な曲です。
(ケルト民謡による組曲という曲の、2楽章目に入っています。)
吹奏楽してる方はわかると思いますが、冒頭はホルンソロ、ハーモニーで、ピッコロソロがあります。
素朴で、どこか懐かしいメロディとそれに対するユーフォ.バスクラの対旋律も綺麗です(吹奏楽版では)
是非、聴いてみてください。