昭男はしばらく状況が飲み込めないままなつくんを見つめた。
するとなつくんは「そうですよ、貴方に抱いてもらっている犬です。犬なんですがスペシャルな犬なんです」
となつくんは昭男の心に話かけた。
なつくん的には「スペシャルな犬」という表現に横文字を使っていることもあり「自分ってかなりヒーローだわぁ」と毎回実感するのであった。

昭男は何がなんだか理解不能、パニック状態になった。

「あなたが理解できないのも仕方ありません。なんせ私はスペシャル犬ですから」となつくんはニヤリッと今にも右奥歯がキラーンと光るような笑顔を昭男に向けた。
その姿とセリフに昭男はアニメの一部分を見ているような感覚になった。
そしてアニメだとこういうカッコをつけたセリフとポーズをとるキャラクターこそ案外弱かったりいじられキャラだったりするなぁと思った。そんな事を考えているうちにパニック状態はおさまり何故だか今のこの奇異な状況を受け入れられていた。

ここにも実は秘密があってこの能力、なつくんの乾いた鼻に涙が落ちた時に涙と少量のなつくん鼻汁が混ざりあい微量の香りが発生する仕組みになっている。
その匂いを嗅ぐと信じられないほど素直になんでも受け入れることができるようになるのである。

なつくんを抱きながら昭男はゴリラのゴリちゃんに話しかけるのと同じようになつくんに話しかけた。

「君も一人なのかい?僕と一緒だね。」そう言ってなつくんをぎゅっと抱きしめたとたん昭男の目から涙があふれ出た。


実はなつくん、ある条件がそろうとすごい能力が使えるんです。

第一に「普通がいい」「平凡がいい」と強く願う人に抱かれる

第二に今の自分におきている状況を受け入れることができない人の涙が乾きぎみの鼻にかかる

第三になつくんがお腹がすいていない


ということで今回は三つの条件がすべてそろったため能力が発動してしまいました。

能力とは・・・・

なつくんが人間と会話ができるんです。

声として発するのではなく涙を流した人の心とやり取りができ会話ができるんです。


なつくん「昭男さん、昭男さん、泣かないで!!私の声が聞こえる?」


昭男は自分の名前を誰が呼んでいるのかと周りをみまわしました。

しかし、特に自分を呼んでいるらしき人はいませんでした。

昭男はなつくんに「なんか誰かに呼ばれたように感じたけど気のせいみたいだね」とゴリラのゴリちゃんに話しかけるのと同じように話しかけました。

そうするとなつくんは昭男の腕をぺろぺろと舐め「話しかけたのは私ですよ。昭男さん」とまん丸の黒い目で昭男の目を見つめました。

昭男は「えっ」と思わず声を出しました。

僕は夢を見ているのか・・・・

しばらく昭男の頭の中は真っ白で頭の先から足の先まで時間が止まったような感覚を感じました。


実はなつくんのたれ耳センサーが反応する時には犬仲間との関わりがあるのだった。

今回に関してはドックランで出会ったヨーキー仲間のジジちゃんだった。

ドックランで犬業界の儀式である「お尻カギカギ」をヨーキーのジジちゃんとしたときだった。

「ねぇ、なつくん!たれ耳たっているよ。しかも耳の中になんか書いてあるよ。」

「え!!センサー反応に気づかなかった!! ジジちゃん、すまないんだけど読み上げてくれる?」

「えーっと、昭男50歳、会社を性同一障害で解雇通告をうける。」

「ありがとう、あと本当にすまないんだけど耳の裏も読み上げてくれる?」

「登場の仕方。犬好きのため震えているときっとコートで暖めてくれる。って書いてあるよ」

「ジジちゃん、助かったよ。ありがとう。ちょっとここを抜け出してくるね。じゃ後で。」


人間からみれば同じヨーキー同士だから匂いをかいだり鼻をつけたり耳の匂いをかんだりでただ仲良くしているようにみえる。

飼い主みおは「ジジちゃんとなつくん、仲いいね!ヨーキー同士だからだね!」と言ってハス向かいにちょうど子犬を発見し「なつくん、ジジちゃんと仲良く遊んでいてね!」と言って子犬に駆け寄っていった。