旅先で知ってる顔を見ることはすごく嬉しい。

たとえ、それが昨日たまたま知り合った顔でも、
また違う街でバッタリ再会したときなどは、
10年来の友達のようなスマイルになる。

今回のような夏のスイス旅行では、
メジャーな観光地なだけにたくさんの日本からのツアーがラッシュで、
いろんな山でいろんな添乗員ともバッティングする。

シャモニー村では
イタリアで会った他社の気の合う添乗員さんとバッタリ会って、ハグをする。

ツェルマット村では
会社の先輩Oさんと遭遇。
ランチを共にし、夜は添乗員の我が隠れ家BARで一杯飲みながら語る。

ブリエンツ村では
行程がほぼ同じだった他社の添乗員さんと同じ列車に乗る。
そのグループのお客様のお顔をも覚えて、グループ同士で手を振り合う。

こんなときの笑顔は、みんな本物だと思う。

添乗員は孤独に仕事をしてるから、
同じような境遇にさらされている仲間を見るとホッとする。

「お客様に囲まれて一人じゃないじゃない」


そうなんだけれど、添乗員はやっぱりみんなのリーダー。

「お客様」に接するときは、一応、言葉を選んで会話をするし、
ひとつひとつの仕草も気を使う。

親しくなっても礼儀ありで、酒屋さんが酒飲みでは商売が成り立たないと言うか、
それなりの一線を置く。

お金のやりとりがある以上は、「お友達」ではないのだから。

それがプロのやり方だと私は思っている。


だけど、本当の笑顔か、偽ものの笑顔かくらいは
お客様にも通じるものがあるだろう。



ツアーの行程が無事に終了し、
帰りの乗り継ぎのミラノの空港で、
今度はまた別の他社の知り合いの添乗員さんとバッティングする。

ギリシャに行っていたらしい。

ピークシーズンの乗継のハブ空港では
こんな風に、いろんなグループとの合流になるときがある。

彼女はさっき知り合ったという一流会社の添乗員さんと一緒だった。

その添乗員さんはクロアチアに行っていたらしい。

そして、そこから成田行きの飛行機は
航空会社の配慮により、添乗員同士で一列に座らせられることもある。

この時も3人で一緒に座ることになった。

機内でリラックスしながら、それぞれの旅の反省会をした。

最初はほのぼのとした内容だったのに、
一流会社の添乗員さんは、15日間の長いツアーでかなりお疲れがたまっていたらしく、
お客様の愚痴、客室乗務員の愚痴、ウェイターの愚痴が始まってしまった。

よっぽど淋しくて辛いハードな内容のツアーだったのだろう。

添乗員は常に孤独なもの。

ちょっとは聞いてあげようか。

しかし、その愚痴は延々と止まらない。

だから、私はビールを一本飲んでそのまま寝たふりをして
本当の眠りについてしまった。


11時間のフライトのあと、無事に成田空港に到着。

数時間前まで、振り乱していた一流会社の添乗員さんは、
この夏の成田の空港の中、黒いジャケットを羽織り、
さっそうと降機の準備にとりかかる。


私も、とりあえず髪の毛をくくり、靴を履く。

降機したとたん、さっきの一流会社の添乗員さんは
税関に移動しながら自分のお客さんを逃さず、すかさず声をかけまくる。

「お疲れ様でした~。
到着してこんなにいいお天気でしたら、
気持ちがよろしいですね~。」

「ご気分はいかがですか~?
もうお別れですね・・。
寂しいですわ~。」

なんだか「オホホ」という笑いが出てきそうな勢いの声の掛け方である。

さっきの機内での口調とは明らかにかけ離れた別人である。


私は、降機後はお客様も頭がぼーっとしていると思うし
それぞれの旅の想いにふけったりする時間でもあるので
敢えて何も言わずに、荷物のターンテーブルに向かう。

分かりやすいところに立っていると、
こちらから集合を掛けなくても、
荷物を各自ピックアップしてお客様は自然に集まって来てくれる。

この瞬間に、このツアーは成功だ!と確信してみたりする。

そして、本当のお別れの笑顔を向けることが出来る。

「やっと終わりだ~~」

という気持ちと、

「これからも元気でいてね」

という気持ちと、

少しだけ、

「またいつか会えたらいいね」

という気持ちが混ざる。


少し嫌味を言われたお客様でも、
旅先でひょっこり再会したら、、、。


それでもきっと、本物の笑顔を向けられると思う。

そんな人間でありたいと思っている。



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