「日本とは」「日本人とは」

知らず知らずのうちに、ぼくは、この命題を背負い、各地を旅してきた。

さまざまな土地で、さまざまな暮らしがあると、ぼくは学んだ。

列島に生きる。海に生きる。山に生きる。

船を上手くあやつり、遠くへ遠くへと・・

 

「沖縄」「卑弥呼」「熊本」

この3つの事象を細やかに描いていけば、命題も明らかになるだろう。

ぼくのここまでの40年間は、ここにたどりついた。

「えっ、その3つって、何か関係あるの」

そういうご指摘もあろう事は承知・・歴史はまさに生き証人!

 

どしゃ降り・・
今年は九州などよりも、東日本や山陰地方に
災害をもたらす大雨が。

かーっと激しく陽射し
がーっと厳しく豪雨
天地の 穏やかさは失われ 憎しみめいた仕返しが
卑弥呼は、ずっと安寧を見守り、人間の行いを戒めてきた。
それなのに なぜ・・

「お、おたすけを・・」
ぼくは必死に懺悔の念を示すが 地獄から使者が・・
おどろおどろしき山は大きく揺れ 荒ぶる海は容赦なく狂い襲う
切り立った岩礁の隙間から ぼくは 奈落の底に・・
地下には、眼球が剥がれ落ちそうな老婆と、生気を失った女の子が、膝を抱えて座っていた。ぼくを睨み、恨めしそうに視線を突きつける。

「はっ」寄り添うように重なる倒木にぼくは恐怖を覚えた。

荒れ地に咲く花をそっと撫でたら、けなげさに心が震えた。

再び向けられる厳しい視線。

「さあ、お前、尋問台の上に立つのじゃ」

「えっ、なぜ、ぼくが・・」

「禿げ山にした罪と河を削った罪に対し、これから審判を下す」

「い、いえ、ぼくは、何もしていません・・」

「では、ごみをまき散らし、排煙を天地に吹いたことをどう思うか、お前の心を糺す」

「そ、それは、かけがえのない地球を人間が勝手に汚し、壊したことを悪いという気持ちは・・」

ぼくの言葉を遮るように老婆と女の子が証人台に立った。

「私どもは、行いを見て参りました。こやつが、無駄に無駄を重ね、廃棄することも厭わないことを」

「そうです。この男が可憐な花をもぎり、数多虫を殺し、地を壊しながら毒瓦斯をまき散らしているのです」

「い、いえ、それは・・」

「とぼけるな。言い訳など出来まい」
ついに、狂気の心証が、尋問に曝された。

「た、助けて下さい。ぼくは何も・・」

心の暴君がむき出しにされ、内臓が口からえぐり出されるほどの苦痛が与えられ、懺悔の叫びが地下壕にこだました。邪心と愚心は、完全に叩きのめされてしまった。「ご、ごめんなさい・・」

「これで、すべてが許され、新たな世が始まると思うなよ。お前たちの罪は余りにも酷く重い」地獄の王がぼくに告げた。

つづけて老婆が「かつて人間は、自然とともに生きていた。美しい自然を愛しんできた。それを破壊し尽くした今の人間。我らの無念の想い、真相と教訓を後世に継承せよ」とぼくに進言した。「お前は分かっておろう。このままでは、地球は狂ってしまうことを。なれば、命の尊厳を守る行動をとれ」と女の子は両手をぼくの肩に置いた。「は、はい・・」
 老婆と女の子はたちまち居なくなった。地獄の怒りと恐怖は冷めて、ぼくは、安らかな揺り籠へと誘導された。ああ、温かい。この温かさは、懐かしい。温もりの果て・・青く広がる海に珊瑚礁のお花畑が・・

「はっ、夢か・・」
冷や汗が額に吹き出ていた。これから、無力な自分に出来ることは何なのか・・



  陽は昇り耿々と愛を届け 閃閃と月華は大海原に広がる
  枯れ山が青々とした山となり 泣き乾いた川も海もすっかり潤う
  神々の声聞いて 心はずみ 苦難をはねのけ勇む
  たけだけしい男 海をまたにかけ 今日も走る