大雨が上がった。

熊本近辺は、線状降水帯がかかっていたらしい。

避難指示が各地で出され、迷惑そうにオジーが道を歩いていた。

来週7月18日からも雨は降り続くらしい。

「雨うつ」と言って良いほど、ぼくは気分が優れない。せっかく梅雨が早く上がったと言うに、なんだかやるせない。窓を開け憎らしいカミナリ雲を睨んだら、あっちも睨んで来やがった。そうか・・ 人間のせいか・・ 因果応報。地球温暖化。

 

となりの麻里ちゃんも 雨傘を差したまま 憂鬱な顔で雨雲を眺めている

きっと夏の太陽のもとで お友達と遊びたかったのだろ

傘を投げ捨て しょんぼり・・

ぼくは そっと 見守る

しょぼん玉を どす暗い空に向けて打ち上げる・・・

虹の泡がぽっかりと宙に浮かぶ・・・  きえるな、きえるな!

このシャボンこそ 麻里ちゃんの この夏への憧れを 願いを 

光り輝いてゆらゆら ふわーっと浮き上がっていく

 

 

増水した河は とぐろを巻いて 濁りきった人の行いを抱き込んでゆく

なにも考えずにずっとやってきたなあ・・ 

他人ごとではない ぼくが このぼくが わるい・・・

「もう 季節なぞ なくなってしまったのかも」ぼくはぽつり呟く

「うん 最近 夕立来ないね」カミさんまでもがいいことを言う

「夕立か・・ はげしすぎる集中豪雨がとって代わった・・」

「そうね あの夏はもう・・」

カミさんの瞳には こどもの頃の入道雲が 恨めしく写っていた・・

 

それでも 麻里ちゃんのシャボン玉は きえない

暗黒にうかぶレインボーは 華やかな夏祭りを映しているんだ

それとも 川辺の草むらで青空を背に駆け回る憧憬を 懐かしんで・・ 

 

思い出・・・

「よかったー」 時計を見ると九時過ぎ 外を見ると雨がやんでいた
わんぱくが じっとしているはずがない
縁側から外をのぞき込むと ウソのように道の雨水が少なくなっている
さっそく外に出る 走って堤防に駆け上る
昨夜見たときよりも川の水位は下がっていたが、
相変わらず汚れた川水の濁流が昨日の大雨のすごさを物語っていた
「被害はなかったのだろうか」そう心配してみる
その心配が良かったのだろうか 川岸の向こうの空を見ると
奇跡のような大きな虹が架かっていた
「すごいすごい」 はっきりと七色が空に浮き上がっている
虹の出所を探すために 一所懸命つま先立ちをして 地平線すれすれを見る
すると 地球の丸みが分かったような気がした
「おーい、みんな」「大きな虹がきれいに出ているよ」と家族に伝える  
みんな雨上がりがうれしくて急ぎ足
妹は息せき切って土手を駆け上がってきた 父も母も
きれいな虹を家族みんなで見上げた
「ほんときれいに虹が出ているね」「あんな大雨がうそみたいだね」
みんな口々にそう言って 虹の様子をしっかりと眺めている・・

 

『卑弥呼物語ー愛の誓約』がようやく本になる!

ずっと ぼくは 卑弥呼に憧れてきた

それは 纏まりを求め平和を築いた 永遠の女性(ひと)

祈りは 奇跡に・・

遙か天空から この時代を 列島に暮らす人々の営みを

見守っておられる 日の巫女

「しっかりしろよ 和人たち」 そう声がきこえ来る

「はい・・」

 

その声にぼくの憂鬱も少しばかり晴れてきたようだ

天空には 青さが戻って来ている・・

さあ でかけよう