赤く朱く燃えるあの花は ふるえる蜃気楼となって
  彼方に煌めく 回る回る忘られぬ君の笑顔
  風の詩がきこえるよ そっと心を寄せ合ったあの日に
    麗しゅう思い出す ため息のハートに ほのかな火がともる
  今はひとりためらいの道をゆく
   それでも君は 砥ぎすまされた緑の枝の先を魅せようとする
  それでも君は 羽ばたいてゆく青い海鳥を魅せようとする
  空を映せ 海を越えろ 山に染まれ 君の優しき魂よ
  愛の詩がきこえるよ 熱く熱くこみあげる涙に

1980年、5月、ぼくは、首里城跡の丘に居た。

いよいよ首里城再建が目前に迫り、大学キャンパス移転の話が進んでいた。

琉球石灰岩の石垣を見ながら、ひとり丘に上がって佇む。

ガジュマルやセンダン、ソテツなどの木陰に、悠久の流れを汲み取る。

ああ、風が・・・ 涼風が頬を撫で、気持ちが安らいだ。

人々が暮らし働いている那覇の街並み・・・

四角い建物の壁面には、穏やかな陽射しが照りつけている。

所々にハイビスカスの赤い花が見え隠れし、うりずんに揺れている。

ハイビスカスの花は、一日でしぼんでしまう。

ぱっと咲いて、しぼんだら、花は人の手で摘まれる。

ハイビスカスに肖り、ぱっと新たな恋が芽生えれば良いと、思ってた・・・

恋愛をできたこと・・・ 好きになることの良さ・・・ 長続きしない若き恋

 

吾輩死亡遊戯事件が勃発したのは、ちょうどその頃・・・
「おい、魅音だろ、あれは・・・ 死んでないかい・・・」
発見した片山(ぼくの恋のライバル)が、いきなり叫んだ。
「うわっ、でーじやっさー」
龍潭池の畔に集まり、安酒をかっくらい、ごろごろと寝転がっていたみんなの顔がひきつった。
飲んべい男が、仰向けで龍潭池に浮かんでいるではないか・・・
暗闇の中、懐中電灯で照らせば、目を閉じたままのぼくが、ぽっかり池の面に。
「いそいで、ひきあげろ!」
誰からともなくそう言って、池に入り、腰まで浸かってぼくを引き揚げた。

目を開けないぼく・・・ 面々は、誰もが死んだと思った。
「すぐ、救急車を・・・」 と先輩が言ったその時、
「ふああーっ・・・」とぼくの口から・・・
「おい、こいつ」 「生きてやがんのか・・・」
「わっはははっ、良かった、生きてた」
「なんだあ、何かあったのか・・・」

何処吹く風の面持ちで、ぼくは立ち上がり、背伸びをした。
「良かった、ほんとうに、良かった」
状況を整理すれば、ぼくは酔って眠ったまま、すっと龍潭池に浮かんだということ。

まかり間違って、うつ伏せになっていたら・・・
「まくとぅそーけ なんくるないさー」

そんなこともあったっけ・・・