全てを見終わって──



前章に続き『天野可淡ワールド』が古民家の中に展開されたわけですが、また前回とは違った趣きがありました


それを見て何を感じたか、感じれたか──
は、実際に目にした人だけが受け取ることの出来る、秘められた宝物なのかもしれません


ここに来ると、古民家ごと現世から切り離されたような、不思議な浮揚感と重く濃い空気に時間を忘れてしまいます

今回は荒波が打ちつける音がBGMにかかっていました


寄せては返す波のように、何度も何度も引き寄せられ、またこの場所に私は戻ってくるでしょう


私は改めて偉大な人形師の早すぎる死を悼みました

この人が作り出す人形、世界をもっともっと未来永劫見てみたかったです

可淡さんの肉体は滅びてしまいましたが、その魂は遺された人形を触媒として、また新たな人形師に受け継がれて行くことでしょう




今回もあっという間に二時間半もの時間が過ぎていた



一階の受付に戻ると、佐吉氏がおられた


前回頼んであった写真集『天野可淡復活譚』を受け取った



今年、『マリアの心臓』でたくさんの人形に出会えたことを感謝し、また来年も楽しみにしていることをお伝えした

そのためにはお体を大切にしていただきたいとも


佐吉氏が手を差し出されたので、両手で握手を交わした


乾いた柔らかな手でした



帰り道、家まで帰りつくのが待てなくて、途中スタバでお茶しながら写真集を眺める

たくさんのポストカードのおまけと、写真集には佐吉氏のサイン




家に帰って改めてゆっくり1ページ1ページ丹念に見つめた



名を持つ人形に名前のテロップが入っていないのも、単なる人形図鑑とは一線を画するためだろう


この写真集には

プロデューサー兼、
美術監督兼、
演出兼、
カメラマン、
である佐吉氏の世界が、可淡ドールを通して凝縮されている


可淡ドール一体一体の持つ魅力をもっとも効果的な演出で最大限に見せてくれている
と思う


可淡さんと佐吉氏という、エネルギーと美意識の権化の二人が、最強タッグを組んだ結果生み出された新たな作品だ

大事に、でもしまい込むのではなく何度も手に取って見かえしたい




来年も私の『マリアの心臓』詣では続きます(笑)