まわり縁側に出ると左側の足元に、恋月姫さんの『遠國     さくら』と中川多理さんの『杏子』

着物姿の二人の少女は次のお家が決まっているようだった

突き当たりには、日本髪を結ったマヌカンの頭


右側の壁沿いには、スタイネール、ジュモー、マルセル、ジュモー、シモンハルビック

どれも1870~1890年の小さめのビスクドール


レンチドールが三体

レンチドール本体も愛らしいが、フエルトの衣装も凝ったデザインで今風でもありすごく可愛い


ぐるりと部屋を回り込んで、ブリュ サークルドット、ケストナー

シャーリーテンプルの少女が二体


陽の届かない縁側の突き当たり、薄暗がりの中に、堀井孝雄さんの『鷺姫』がぼんやり浮かび上がる

白装束の着物に左腕を胸の前で曲げ、表情のない白い顔を傾げてこちらを見る女の姿は亡霊そのもの

ドキリとする

ぼんやりした客を驚かそうとする、佐吉さんの遊び心か



回り込んだ部屋の中には、第二章から常設されている恋月姫さんの、二体の『天草四郎時貞』

床の間を背に椅子に腰掛ける、ほぼ等身大かと思われる美少年

右は『ジェロニモ』、左は『フランチェスコ』

どちらも甲乙つけ難い、匂い立つ様な艶やかさと色気

二章から言い続けてるけど、あえて選ぶとしたら私はフランチェスコのほう


二体の前に置かれた大きな水晶玉

背後には受胎告知に現れそうな二体の天使の聖像

床の間には二基の行灯

部屋の中央の神輿のようなものの中には、二体のおいなりさん(狐)

天井からは天使のシャンデリア


宗教も時代も混沌としているのにこれ以上ないくらい、調和のとれた空間になっている

しばらくフランチェスコの前に座り込んで、雨音を聞いていた



来た部屋をたどって最初の板張りの部屋から二階へ上がる



入ってすぐ、丸テーブルの上にすくっと立つ天野可淡さんの黒い猫

長い衣装に隠されているけど、よく見ると三本足


左手の壁沿いに、蝋独特のやや透明感のある質感を持つワックスベビーが二体

山本じんさんの裸体で膝を抱えた少女は纏足

その奥のガラスの柩で眠る少女は恋月姫さんの『マリアクローチェ』

その隣には小さな木の檻に入れられた、恋月姫さんの描き目半眼のヘッド


一番奥で長椅子に横たわる、恋月姫さんの白い下着姿の少女


右手の壁沿いには、ポルトガルの聖母子像とピエロッティの大きめのワックスドール



さらに三~四段上がった屋根裏部屋


天野可淡さんの人形をこれだけ一度にたくさん見れる機会はめったにないと思う

さらにガラス越しや柵越しでなく、ほんとに息遣いが感じられるくらい間近で見れるなんて、他では考えられないこと

(以下、特に表記がない限り可淡さんの人形)


紫色の縮緬のような生地のパンツツーピースを着た小さめの少女


膝立ちで天を仰ぐ『夢見る少女』は乱れた長い髪にレースのスリップをまとう

タイトルとは反対に苦悩や絶望感の漂う表情


姫カットの現代風の少女


マントで頭から全身を覆い不安気な『エリノア』


木のたらいに横たわる、色の黒い薄目を開いた赤ん坊



可淡さんの人形以外では、観音扉の仏壇のような木箱に入った、木村龍さんの『秘事』


籠の中からは、明治時代の入道の頭が宙を睨んでいる


棚に並べられた、アールデコの少年少女の首が三つ



梁をくぐって隣のスペースへ


壁に立てかけられた長ハシゴの上段にはピエロの衣装の少女

ハシゴの下段には青い目で何か訴えかけるような少女


背後にはピエロのような上着を着、灰色の先のとんがった靴下を履いた少女  


『夢見るオルゴール』は鏡張りのドームの中に、大きな目の少女とネズミの双顔で三本足


その隣には私一番のお気に入り、魔物と少女のメリーゴーランド


屋根裏部屋の隅、差しかけられた和傘の下に大きな木の盥

その中に、薄黄色の目が印象的な赤い着物を着た少女が横たわる


梁を潜って次のスペースへ


梁に座る少年『カイ』


大きな脚立に腰掛け、今まさに降りてくる途中のような等身大くらいの少女

私が前に立つと目線の高さがほぼ同じ

金髪碧眼なのに華やかというより、落ち着いた雰囲気

足先がボロボロに崩れていて銅線が見えていたりしてちょっと痛々しい


奥の梁には『幼子 レミとマイ』の二体がお互い寄り添っている

劣化が進んでいるのかそれとももともとの質感なのか、表面がざらついている

お嬢さん達がモデルの初期の作品か?



梁を潜って最奥へ


長椅子に横たわる『マリア』は120~130cmくらいの少女

緑色の目に、横に引き開けられた口が不安気な表情を作っている


上半身裸にレースのスカートをまとった少女は唇だけが赤く、艶かしい


その隣の少女は切れ長の目で寂しげだった


長椅子の上の『サリー』は目がオリーブグリーンで、顔色が青黒い


その隣の少女は青紫色の目に青白い顔ではあるが、可愛らしい雰囲気


金色のドームの中の少年『ルイ』は一見少女と見まごうほど

十字架の刺繍のあるゴールドのワンピースを来た聖少年


梁を潜った先に少年『ガブリエル』

黒い衣装、プラチナブロンドの髪に透き通るような薄青色の瞳で小悪魔のよう


梁の上に青い顔の『エヴァ』


横たわる『アンズ』


大きめの『紫苑』は濃紺のワンピースでハッキリした輪郭の青い目の少女



今後もこれほど一度に可淡さんの人形を見れる機会はもうないかもしれない

そう思うと今日ここに居られることの幸せを実感した


長いのでさらに分けます

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