彼岸花の毒気にあてられつつ部屋から縁側に出ると、左側の足元に長椅子に横たわる三浦悦子さんの包帯に包まれた少女が…

口から頬にはしる縫われた傷口が、艶めかしい

突き当たりにはガラスドームの中に花に囲まれて眠る上半身だけの中川多理さんの少女


縁側を進むと、先にある部屋の入口の左右に分かれて椅子に腰掛けた着物姿の少女たちが出迎えてくれる

右には多理さんの『杏子』

左には恋月姫さんの『遠國さくら』

このふたりの子にはどちらも、もう次のお家が決まっているようだった



部屋に足を踏み入れると、床の間を背に恋月姫さんの二体の『天草四郎時貞』

前回の第二章でも登場した二人

右側の『ジェロニモ』は薄いオレンジ転びのピンクのメイク

左側の『フランチェスコ』は薄青緑色のメイク

前回のレポでも書いたけど、私の好みはフランチェスコの方かな?

前回と違い今回フランチェスコには、右手のそばに紫の布に包まれた長いものが立てかけられてあった

刀だろうか?


部屋に飾られた真っ赤な薔薇の花束と真っ白な百合の花束が、むせかえるように甘く濃厚な香りを放っていた



縁側に戻り部屋を回り込むようにたどると、窓からの光が届かない縁側の奥に、ガラスケースの中にハルビック、シュミット、スタイネール、ジュモーなどのビスクドールがひっそり佇んでいる

薄暗がりのなかで、時間が止まったかのよう

じっと息を殺して見つめていると、何かゾクリと鳥肌が立った



逃げるように来た道を戻り、最初の板張りの部屋から二階へ上がる



この部屋は立島夕子さんの巨大な絵が壁を占拠している


部屋の奥の祭壇に見立てたようなテーブルの上に、立島夕子さん『怨霊』シリーズ

No1~16くらいまであるようす

どの絵も様々に塗られた色を上から潰すように、黒い線がのたうち回る

殴り書きしたような何重にも重なる黒い線から、恨めしげな少女が浮かびか上がる


部屋の左奥からは、二羽の鴉の剥製が見張ってきる


部屋の入口には聖母像とガラスケースの中のワックスドールのベビーたち

あどけない表情で独特の肌感がある


部屋の中央の丸テーブルには赤い毛氈が掛けられ、その上には手足を投げ出すように
横たわる、多理さんの『マリア』

空洞の腹部の奥に、時計の文字盤とドライフラワーが覗き見られる

その『マリア』に寄り添うように置かれた、古くて長い泡立て器のようなもの
何かの象徴?





更に三~四段上がった屋根裏部屋


長椅子に横たわる多理さんの『ミリアム』

長い金髪、鳩尾部分に昏い空洞、肩と股関節の球体のみで四肢がない

一見無垢に見えるのに、淫靡な表情


左側には木の蓋がついた古い釜が、ゴロゴロ転がっていて、割れた半身だけの招き猫が梁の陰に沈んでいた


小川哲生さんの『斑鳩』は二人の裸体の妊婦の立像

素朴な表情の妊婦の膨らんだお腹からは、小さなたくさんの胎児が頭と手を突き出している

陰残な感じは全くなくて、原始とか太古とかいったようなおおらかなイメージ


木村龍さんの『蔵の中』は木製のカラクリ装置のようなものの上に少女の首が据えられている

三白眼で艶かしい感じ


その横の『幽霊少女』は虚ろな恍惚を浮かべた少女の頭と未成熟な色気をたたえたボディが古い木製の時計のような木箱の中に収まっている


右側には蓋のない、ひしゃげたヤカンの中からビスクの首が外を見上げている



天野可淡さんのねじ巻き仕かけのねずみ


そして、私の一番好きなメリーゴーランド

今日、初めて電飾が灯っているのを見た

異世界の妖しさ度が増していて、うっとりした



部屋の片隅、ゴザを敷いた木製の盥に傾きながら背を預ける、三浦悦子さんの『花魁』

裸体は所々マダラに黒ずみ、黴でも生えているかのよう

目の周りは黒塗りで腫れぼったく、どこか諦観した表情


左側に細いワイヤーを編んで作ったような首のないボディや衣装の中里絵魯洲さんの『少年』シリーズ


可淡さんの『少女』が二体、お互いに寄り添っている

少し朽ち果てた感じがして、どことなく美しいミイラを連想させられる


その奥に衝立を背に、堀井孝雄さんの『鷺姫』

白い着物に灰色の帯、左腕を胸の前で曲げ小首を傾げてこちらを見る女の姿は幽霊そのもの

顔にも表情らしい表情はなく白い顔に濃い灰色の口紅で、じっと見つめていると目の錯覚か平面の絵のようにも見えてくる

鷺姫を囲むように置かれた、ろうそくを乗せた背の高い燭台たちとすすきの穗が裏寂しげな雰囲気を強調していた



太い梁の下を潜り、屋根裏部屋の最奥へ


陰に潜むように長椅子に横たわる下着姿の
恋月姫さんの美少女

薄い水色の目が、僅かな光に反射して光っていた


棺のようなガラスケースの中で眠りにつく少女には恋月姫さんの『マリアクローチェ』


その隣には恋月姫さんが若い頃描かれた、狐のような女の絵


その隣にはアールデコの少女のトルソーが二体、床から生えているかのように見えた




展示物のレポートは以上で終わり

もう一度目に焼き付けるようにまわりを見ながらゆっくり来た道を逆に辿る



ほんまに贅沢な場所や……

手に触れられる近さで(決して触れることはないけど)、金額がつけられないくらい貴重な人形や絵画が惜しげもなく展示されている


今日は平日の遅い時間で天気が悪いこともあって、貸切のようにゆっくりほぼ独りで見て回れた

あっという間に二時間が経っていて閉館間近やった


受け付けで会釈と挨拶をして外に出ると、出たところのベンチにお客さんと佐吉さんが座っておられました



自分のテリトリーに入って来られるのは苦手やけど、自分から相手のテリトリーに入っていくのは平気な私は図々しくも会話のお仲間に入れていただいた(笑)



そこで更に図々しく佐吉さんにリクエスト(笑)

「ぜひぜひ、佐吉さんの案内で『マリアの心臓ツアー』を催して下さい!!」



毎回思うんやけど、お人形について何にも知らへんから、すごいもったいないことしてると思うねんなぁ

知識がなくてもその素晴らしさに感動するけど、由来とかエピソードとかを知っていればもっと違った見方もできるはず

見るべきところを見落としてたりもするやろうし……


そのためには佐吉さんに解説してもらいながら見て回るんが一番やん!╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !



結論から言うと佐吉さん、ツアーの件は考えておられるそうです



ただ、時期は……

展示場所を今の古民家だけでなく、倉庫の方にも広げられる予定で、それからになりそうとの事

しかも倉庫、ひとつだけじゃないみたい


展示は毎回、佐吉さんひとりで行われてるそうなのでとてつもない時間がかかりそう……(;゚Д゚i|!)



でもいいです!

いくら時間がかかっても待ちます!

かなりの重労働だと思われますので、佐吉さんにはくれぐれもお身体に気を付けていただきたいです(๑•̀ㅁ•́ฅ✧  



あと、止んでいた雨が急に降り出したことでちょっとした内緒のお話が聞けました


でも内緒やから(笑)


情報公開になってからこのエピソード書くわな  (๑•ω•๑)/"♡