試練その2
つづきです〜

その女性が、私が白髭さんの病室に行かない時間帯に度々会いに来ていたこと。

彼が彼女と暮らしていたこともあって、保険の証書や同じ職場だったみたいで、同僚とのやりとりの仲介役に彼女がなっていたこともわかった。

同僚の皆さんが、彼の病状を彼女に尋ねるくらい、彼と彼女が付き合っていることは周知の事実だったこと…。

全て理解した私に
一気に苦しさが押し寄せた。
訳がわからなかった。

全てが嘘だったの?
これじゃ、私がふたりの仲を引き裂いたことになる。

我がもの顔で、親族席で葬儀に参加していた私を、同僚のみんな…そして彼女はどんな思いで見ていたのだろう。

全てが嘘なの?
だって先に私に愛してると言ったのは白髭さんだったのよ?

私に俺のお嫁さんにするからなって言ったのも白髭さん、あなたよ?

娘にもお父さんになりたいって言ってたのよ?

わからない!
どうしたらよいかわからなくて…。

私、やってはいけないのに。
白髭さんの携帯電話から、唯一私が彼の病室で会った彼の友人の連絡先を探し出して、悩んだ末、電話してしまった。

藁にもすがる思いで。
真実が知りたくて。

全て嘘ならば、私が彼へ尽くした時間も、看取った苦しみも全てが否定されてしまうから…。

苦しくて狂いそうだった。
彼を失った哀しみだけでも尋常じゃないのに、こんな事実は私にはあまりにも残酷だった。

彼の親友の女性。
私が唯一彼から紹介された友達のその女性は、私の電話した理由をすぐに理解し、全てを教えてくれた。

彼と彼女は15年近く同棲していた。
事実上の夫婦のようにみんなは思っていた。でもお互いに自由で束縛しない間柄だったようだと。何度も別れ話がでては、流れていた。今は同居人のようだったが、男女のことなので詳しくは当人たちにしかわからない。

私のことはもちろん白髭さんから聞いていて、本気だった。亡くなる一ヶ月前、病院から外出した日に彼女に別れ話をして別れたと。

彼は弱くてひとりでは居られない人。
私が全てを知って去ることを何よりも恐れたのではないか。自分をいちばんに愛して大事にしてくれるあなたを失いたくなくて、傷つけたくなくて最後まで嘘をついたのだと。