シャーロック・ホームズのクロニクル
ジューン・トムスン 1992年
創元推理文庫 1993年
前作「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」に続き、シャーロック・ホームズのa聖典中において語られざる事件として、相棒のワトスン博士が未発表原稿とて、ロンドンの銀行の私書箱に保管してあったものを、同姓同名のジョン・F・ワトスン哲学博士が買取り、それを甥(または姪)のオーブリー・B・ワトスン歯科医師によって発表されたという形式を取っているシャーロック・ホームズ物のパスティーシュ(模倣)小説である。
「パラドールの部屋」「ハマースミスの怪人」「マイプラステッドのマグパイ」「ハーレー街の医師」「ロシアの老婦人」「キャンバウェルの毒殺事件」「スマトラの大鼠」の7編から成る。
パロディ要素を廃し、聖典に忠実な構成と推理法で、正統派のパスティーシュといえる。
アーサー・コナン・ドイル卿が書いたシャーロック・ホームズ物は、古くから無数の魔法作品を生み出して来た。発表当時英仏で人気を分け割ったルパン物の作者モーリス・ルブランでさえ、邦訳で「ルパン対ホームズ」や「怪盗対名探偵」の訳で知られる「遅かりしホルムロック・シアーズ」という作品を書いているし、名アンソロジスト(短縄編集者)でもあった巨匠エラリー・クイーンには「シャーロック・ホームズの災難」というアンソロジーがある。
また、やはりミステリーの巨匠であるディクスン・カーにはコナン・ドイル卿の息子のアドリアン,コナン・ドイルとの共著で「シャーロック・ホームズの功績」という作品を書いている。
ドイルの文体と、ホームズの推理法自体は真似がしやすいのも多くの模倣作を残した理由であるし、日本の作家の島田荘司による「漱石と倫敦ミイラ殺人事件)などはよくできていたと思う。


