死神の戯れ | われは河の子

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 死神の戯れ ピーター・ラヴゼイ 2000年

       ハヤカワ文庫 2002年


 イギリスのウィルトーシャー州の小さな村フォックスフォードの聖バーソロミュー教会の牧師に赴任して来た若い牧師のオーティス・ジョイは前任地でまだ若い妻を亡くして来たという触れ込みだったが、神学の教養は深く、人徳は高潔で、ユーモアがあり、スピーチは感動的で、人付き合いにも如才がなく、村の男性教徒には熱狂的に支持され、女性たちを恋の虜にするカリスマ的な魅力を備えていた。


 しかしそんな彼が、地区の主教に、前任地での教会献金の横領の証拠を突きつけられ、辞任を迫られる。宗教生活に生きがいを見出していたオーティスは、主教の頭にガラスのペーパーウェイトを叩きつけ殺害する。

 そして遺書を偽造し、主教のクレジットカードを使って電話SMサイトの鞭の名手「マダム・スウィッシュ」の録音テープを10分くらい流して、主教にそんな趣味があったことの証拠を残して、その死体を石切場から放り落とす。


 敬虔なイギリス国教会の牧師であるオーティスにはあまりにも冷酷、残忍な悪党の血が流れていた。

 そうして次々と殺人を重ねていくオーティスに、信徒の女性で園芸家のレイチェルは惹かれていき、レイチェルの友人の未亡人のシンシアとも恋の鞘当てが繰り広げられる。

 素人のレイチェルが牧師の推薦によって教会の新会計係に就任したことに納得がいかない勅許会計士のバートン・サンズは、村のゴシップ屋のオーウェン・カンバーバッチが流す何の根拠もないオーティスの悪口に乗って、何とか彼の悪事の糸口を掴もうと必死の独自調査を行い、前任地においての経歴詐称と、妻を蜂に刺させることによって急性アレルギー(アナフィラキシー・ショック)で殺害した状況証拠を突き止め、村の巡査に告発する。

 神は正義を行うのか?


 アガサ・クリスティーの生んだもう1人の名探偵ミス・マープルが活躍する舞台の村「セント・メアリ・ミード」を思わせる小さな村であるフォックスフォードでは、村ながらの閉ざされた社会ゆえの、住民同士の親密さとおせっかいと嫉妬やゴシップが危ういバランスの上に成立していた。

 そんな場所に赴任して来たまだ30になったばかりの若くハンサムで押し出しの効く牧師オーティス・ジョイ。

 彼の悪事はキリスト教徒ならずとも許されざることだが、読み進めるうちに読者も彼の魅力に引き込まれて行き、逆にオーティスを追い詰めるバートン・サンズに憎しみを覚えるようになる。

 冒頭から主教を撲殺するというショッキングなシーンから幕を開けるが、そこはイギリス現代ミステリの業師ラヴゼィである。どんでん返しに次ぐどんでん返しは見事で、特にラストの2度にわたるどんでん返しには唸らされた。


 「刑事コロンボ」のように、犯人側から事件を描き、最後にそれが破綻するというパターンの、倒叙型ミステリーなのか、最後に悪党が勝利するピカレスク・ロマン(悪漢小説)なのか、最後の最後までわからせなかったのは見事の一言に尽きた。