日本における妖怪は、そのほとんどが出現地が決まっている。
例えば、鬼太郎の仲間の一反木綿というヤツは、薩摩(鹿児島県)にしか現れないし、
人の心を読む覚(さとり)という妖怪は飛騨・美濃(岐阜県)に出るという。
さらにコロナ禍の時に有名になったアマビエは、肥後(熊本県)でしか目撃例がない。
ところが、天狗と河童だけは全国に伝わっているし、各地でほぼそのイメージが統一されている。
もちろん天狗は山伏の修験道と強く結びついているので、鞍馬山・愛宕山・高尾山・立山・英彦山・飯綱山・富士山など錚々たる霊山がその棲家として知られるが、それでも全国にわたっている。
この天狗が、初めて史書に当時するのは日本書紀の舒明天皇の九年で、都の空に大彗星が現れ、雷のような音を立てて、東から西へ飛んだ。
不吉な前兆として、人心を不安に陥れたが、この時、中国から帰朝したばかりの留学僧の僧旻(そうみん)が、「流星にあらず、これ天狗なり。その吠ゆる声、雷に似たらくのみ」と言った。
この場合の天狗は「アマツキツネ」と読む。
夜空に長く尾を引く彗星の様子が狐を連想させたのだろう。


