名探偵傑作短編集 法月綸太郎編
講談社文庫 2017年
先に紹介した有栖川有栖の火村英生集と同じ傑作短編シリーズ。
名探偵法月綸太郎とその父親の法月警視、そして友人以上恋人未満の図書館司書沢田穂波を交えて、数々の難事件に挑む。
過ぎにし薔薇は…… 穂波の勤務する図書館に毎日通っては、脈絡のない本を3冊ずつ借りて行く女の目的は何か?
日時生活だ紛れ込む、ふとした不思議を綸太郎が改名した時、そこには深い悲しみがあった。
背信の交点(シザーズ・クロッシング) 信州安曇野帰りの綸太郎と穂波の乗るL特急「あずさ68号」が、松本駅を発車して,大滝駅に到着直前、2人の前に座っていた夫婦の夫が突然死亡する。綸太郎は毒物死であることを推測し、それを鉄道警察に告げる。第一発見者の形となった2人は残された妻と共に病院でやはりそれが車中で飲んだウーロン茶に入っていた青酸化合物によるものであることを知らされる。
その頃、ほぼ同時刻に大糸線、篠ノ井方向に向かっていた「しなの23号」の中でも、1人の女が毒物死していた。
綸太郎は死んだ2人が松本駅のホームで向かい合って停車していた二つの列車を使った心中事件と推理する。
松本清張の有名小説のトリックを思わせる,緻密に計算された時刻表トリックが使わられるが、さらに作者は敬愛するエラリー・クイーンが晩年まで取り組んだ「後期クイーン問題」に、ひとつの解答を与えている。
「世界の神秘を解く男」 テレビ局が企画した心霊番組のアドバイザーとして出演することになった綸太郎は、小学校4年生の少女がポルターガイスト現象を起こすという家のロケに同行する。
2階の少女が自室で眠りに落ちているのをその目と脳波モニターで観察している時に、突然階下で大きなシャンデリアが落下し、超能力肯定派で番組のスーパーバイザーを務めていた教授が圧死する。しかしシャンデリアは垂直方向だはなく、やや斜めに落下していたし、取り付け金具には加工した痕跡が残っていた。クイーンと並ぶ本格派の旗手ジョン・ディクスン・カーのある作品のオマージュになっている。流石にカーのトリックをさらに捻って読み応えのある佳品に仕上がっている。
「リターン・ザ・ギフト ある冬の日、東京神楽坂のマンションに住むOLが侵入して来た男に襲われたが抵抗したところ犯人3階のベランダから飛び降り足をくじいてそのまま逮捕される。彼は酒場で知り合った男にOLの殺害依頼をされたことを証言する。リストラに遭いそうになり、ストレスが溜まっていた時にむしゃくしゃして飲みに行った飲み屋で意気投合した男に頼まれたという。 そしてその男の妻が電気の延長コードを切断したもので絞殺されているのが発見される。
OL襲撃犯の供述では男に交換殺人を持ちかけられたというのだ。飲み屋で酔っ払って交わした名刺を持っていたのでその男の名前がわかり家宅捜索すると、図書館から借りた交換殺人をテーマにしたミステリーが3冊も並んでいた。
本は穂波の図書館から貸し出されたものであり、その穂波自身が差し出したのであったが🤭マスクをかけてマフラーで顔を隠し、全身を包むコートに包まれてまるで変装しているようだったことは認めた。その男は襲われたOLの弟で、これもまた失業中で、姉から度々金を借り、雑縁宣言までされていた恨みがあったということで交換殺人の図式が成り立ったが、綸太郎はそこにさらなる作為を感じた。
都市伝説パズル 2002年の日本推理作家協会短編賞受賞作。
都市伝説の通りに殺人が起こる。大学生男女数名が試験の打ち上げコンパの後二次会で1人の学生のマンションに場所を移すが、この部屋の主の下手な学生が口論を始め、相手の学生は先にマンションを出る。しばらくして残りのメンバーも解散してふた方向に別れて帰ろうとするが、1人の女子学生がスマホを先輩のマンションに忘れたことを思い出しもう1人の女子学生の自転車を借りてマンションに戻る。しかし先輩はすでに寝込んでいるらしいが部屋の鍵は開いていたのでそっと部屋に入ってスマホを探し当て、友人の待つドーナツ屋に戻る。翌日宅配便の配送員がそのマンションを訪れ死体を発見する。アイスピックで胸を刺された出血死だったが、壁に多文字で「電気をつけなくて命びろいしたな」というメッセージが残されていた。これは女子学生がスマホを撮りに部屋に戻った時にまだ犯人は暗闇の中に潜んでいたという都市伝説と全く同じ構成になっていた。
縊心伝心(いしんでんしん)
海外出張から戻った男の携帯に、不倫相手のひとり暮らしのOLから,これから自殺をするという予告電話をかけ,驚いた漢が慌てて彼女のマンションに駆けつけると、女はロフトベッドの脚にロープをくくりつけ、首輪吊って死んでいた。
圧巻ありふれた自殺だったが、検死の結果、死因は,ベッドの反対隅にあるワードローブの角に頭を激しくぶつけた打撲傷であることがわかり、他殺の疑いが濃厚となる。
父親の法月警視からその話を聞いた綸太郎は、被害者高野ホットカーペットのスイッチがコタツ河ではなく、ソファの下に当たる位置を温める位置になったいたことから推理を組み立て、ホットカーペットの異動のトリックを見破る。
なり綸太郎は、京大ミステリ研究回で綾辻行人と同期で、やはり新本格派の第一に稲田であり、同志社大ミステリ研の有栖川有栖動揺、エラリー、クイーンに心酔していて、そもそも作家探偵と、その父親の開始という組み合わせと、単体名と作者名称が同じという趣向はエラリー・クイーンそのものである。
新本格派らしい緻密なロジック(理論)で構成されているが、やや物理的にトリックが多かったが、それも心理トリックと上手く融合している。
作家と同時にミステリ評論家の面も持っているので、そんな知識を図書館を舞台によく生かしている作品も多かった。
個人的には「背信の交点」と「都市伝説パズル」が特によかった❣️

