黒いカーテン | われは河の子

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 黒いカーテン ウィリアム・アイリッシュ 

1941年 創元推理文庫 1960年


 落ちて来た漆喰に頭を撃たれ昏倒したフランク・タウンゼントは意識は戻ったものの、自分の帽子に見覚えはなく、ポケットに入っていた高価そうな煙草入れにも見覚えがなかった。自分のアパートに帰ってみるとそこは空き部屋になっており、管理人の女性はこの部屋はもう6週間も空き部屋になっていることを告げる。タウンゼントは恐る恐る妻のヴァージニアの行方を知らないかと管理人に尋ねてみて、彼女の住まいを知り飛ぶようにして訪ねて行った。

 郵便受けに結婚前のミス・ヴァージニア・モリソンの名前を見つけて驚いたタウンゼントだったが、現れたヴァージニアは彼をしっかりと抱きしめ、タウンゼントがもう3年も行方不明になっていたことを告げる。

 タウンゼント自身にもその3年間の記憶は無く、彼は自分の過去から切り離され、先ほど頭を打ったショックで、3年前以前の記憶だけが蘇ったことを知る。


 たまたまヴァージニアが元の会社に転地療養の届を出して休職扱いにしてくれていたから、彼は元の職場に戻ることができ、また妻との間につましくも幸せな毎日が続いていた。


 しかしそんな平安な日も突如として破られる。

 ある日タウンゼントは彼をつけ回し監視している男に気がつく。

 がっしりとした体格で灰色の目が瑪瑙のように光っていて、グレーの背広を着てグレーの帽子を被っている。

 タウンゼントはその男を地下鉄で巻こうとしたが、乗り遅れた男はプラットホームで行き過ぎる列車の窓を拳銃を取り出して叩き割った。

 

 彼は3年の間に何をしていたのだろうか?

 生まれ変わった彼は新しい彼でいられるのか?

 サスペンスの名手アイリッシュが放つ好編❗️


 文庫本にして本文で200ページに満たない作品だが、彼得意のサスペンスが押し寄せる。

 自身の失われた3年間を追い求める一方で謎の追撃者からの逃亡劇を描く前半と、ついに過去との関連に繋がる人物の発見と、そこから垣間見える忌まわしい過去、そして再び迫り来るカタストロフィ(破滅)への一歩一歩。

 これだけの短いページ数の中に計算され尽くして配置されたストーリーの妙。


 確かに80年前のサスペンスミステリであるが故に犯人像と殺人方法は古めかしいとしかいえないが、古い作品でもこれだけの求心力を持っていることをまざまざと見せつけた作品だった。