さらば愛しき女よ さらばいとしきひとよ | われは河の子

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さらば愛しき女よ レイモンド・チャンドラー 1940年 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976年


前科者である大鹿マロイは刑務所を出たその足でLAの黒人街を訪れ、かつてそこのナイトクラブでショウ・ガールを務めていた別れた女ヴェルマ・ヴァレントを探しに来たが、そこでまたしても殺人を犯してしまう。

 たまたまその場に居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウも通報者として取り調べを受ける。

 マーロウはその後、マリオという名のジゴロ風の男に知り合いの女性が強盗に遭って奪われた高価な翡翠のネックレスを強盗団から買い戻すためのボディガードとして同行して欲しいと依頼を受け、彼に同行するが、指定の場所で何者かに殴られて気を失っている間にマリオは殺害されてしまう。


 依頼人を死なせてしまった悔悟から調査を始めるマーロウは、マリオのポケットの中に麻薬タバコを発見し、さらにそのフィルターの中に巧妙に隠されたとある精神科医の名刺を発見する。

 その精神科医に調査の矛先を定めようとすると、またしてもマーロウは何者かに襲われて重傷を負う。

 どうやらマロイが起こした事件がすべての発端になっているようであった。


 6月に数十年ぶりで、チャンドラーの最高傑作とされる『長いお別れ』を読んで感銘を受けたので、これまた名作の名を欲しいままにする本作をブックオフで目つけて購入した。



 これもかつては持っていた本ではあったが内容はほぼ忘れていた。

 しかし、LA(ロサンゼルス)というところは、これも先日読んだクイーンの『ハートの4』でもそうだったが、特にこのマーロウの地元はビバリーヒルズという超高級住宅街を持ち、大富豪が暮らしていて、さらに近郊にハリウッドとラスヴェガスを抱えるだけに、何かにつけて派手派手しく、ギャングと悪徳警官と怪しい精神科医が目立つような気がする。

 大鹿マロイとの出会いは『長いお別れ』のテリー・レノックスとのそれと同じようなパターンで、マーロウはいわば巻き込まれるように関わって行くのであるが、そんな些細な関係にも関わらず、あるいは自分の命を投げ出すことになりかねない事件に首を突っ込んで行く彼の男意気が胸を打つ。

 したがって、結末というか、隠されていた謎には容易に予想がついた。

 個人的には『長いお別れ』の方が上位に来ると思う。

 こちらも近年同じハヤカワ文庫から村上春樹の新訳で『さよなら、愛しい人』の訳名で出版されているが、名訳として名高い清水俊二訳の本書に替わる必要があるのかはわからない。