ロスアンジェルスと東京で正体不明の疫病が発生し多数の死者が出る。同時に民族紛争が続くキプロスで化学兵器を使用したテロが連続発生する。
007 ジェームズ・ボンドは細菌兵器を使い世界を混乱に陥れようとするカルト教団と対決する。
現実社会に起こってみて、改めてその恐ろしさに気がついたが、不明のウィルスによる混乱は、作家の意欲を刺激するらしく、20年も前にボンドはすでにその只中にいた。
原作者の故イアン・フレミングの遺志を継ぐイアン、フレミング財団により正統な後継作と認定されたレイモンド・ベンスンのシリーズで何年か前に読んだ本だが、その時にはことさら印象に残らなかったが、いま読むと現在進行の恐怖を増幅させてページをめくる手が止まりません。
しかしジェームズ・ボンドはすでに原作者により1963年に発表された「女王陛下の007」の中で、家畜や農作物に壊滅的打撃を与えるウィルスを使った脅迫事件にあいまみえています。さすがに世紀を超えた世界的ヒーローです。現実社会を遥かに上回るリードをしていたことがわかります。
レイモンド・ベンスンの新ボンドシリーズには、以前紹介した、青函トンネルと北海道、そして瀬戸内海の島を舞台として河童と対決する「007/赤い刺青の男」がありますが、やはりカドカワポケミズで訳出された当時こそ、北海道と香川県で映画誘致運動が起こったものの、現在ではほとんど注目されることはないのが残念です。本作と共に脚光を浴びることを願っています。