ルーツ 3 鶴に身をかれほととぎす | われは河の子

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それから5年後。
大学生になった私は、春のサークル旅行で日本三景の一つ天橋立を訪れたことで、日本三景にあやかったあの話を思い出し、夏休み明けに帰省先の函館から戻る途中、松島に寄ってみることを計画しました。

切符の手配をし、小さなガイドブックなども買い求め、あれこれ事前に見どころなども調べたりしていました。

そんなおり、何かのキッカケでそばにいた父に
「亘理には、血筋の家とか親戚とかはいないの?」と尋ねると、
父はキョトンとした顔で
「なんの話だ?」と聞き返します。
「ほら、うちの先祖が亘理の殿様から松島の名前をもらったってアレだよ」
しばらく考えていた父は、やがて納得した顔をすると、

「おお、あれは嘘だ」
ととんでもないことをいうではありませんか。

前述したように、公務員だった父は、見るテレビといえばニュースかドキュメンタリー。たまに見るドラマもルーツのような硬い物(西部劇や戦争映画は好きだったようですが)。
冗談などは全くいうタイプではなかっただけに仰天しました。
だいたい俺のもらった賞状はどうなる!
K先生の感激はどうなる!

どうやらまったく根拠のないでまかせだったようですが、それにしても話の符丁は合いすぎです。

「実はうちの先祖は、三重県で寺子屋をやっていたんだが、コレラでその寺子屋を全滅させて、村人に石もて追われて北海道に渡って来たんだ」

いや、もう信じないし。

生前に父が残した(わかるとこは調べたらしい)戸籍のコピーなどを見ると、父の祖父は直右衛門、曽祖父は作次郎という名前だったことはわかりました。
しかし、直右衛門は北海道でも夕張の生まれで伊達とは全然関係がなさそうです。

伊達の本家は、私の年長の従兄弟が継いでおりますが、この方はあまりそういう歴史に興味がないと父が語っていましたし、
私自身も爺ちゃんが元気だった幼い頃以来行ったことがありません。
我々の世代が元気なうちに、きちんとしておかないと何も残らなくなってしまいかねません。
まぁ、日本では「系図買い」といって、都合のいい家系のでっち上げは昔から行われてきていますから、それはそれでアリかもしれませんけどね。
将来私に孫ができて、その子に訊かれたら、私はやはり伊達藩の話をするかもしれません。


今回の記事で感動してくださった皆さんには申し訳ありません。
しかし、皆さんのルーツに関する話もいろいろ聞けて面白かったです。

もし、お宅にファミリーヒストリーが伝わっていたとしても、あまりに上手すぎる話には注意した方がいいかもしれません。



松尾芭蕉が松島を見たとき、そのあまりの絶景に句想が及ばず、
「松島やああ松島や松島や」とだけ詠んだというのは俗説です。
しかし、確かに「奥の細道」の松島のくだりには芭蕉の句はありません。
同行した弟子の曽良の一句

松島や鶴に身をかれほととぎす

があるだけです。
我が家のルーツも鶴に身を借りたというお粗末でした。


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松島in松島