しゅなぱぱのPhoto Life

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2013年3月:タイトル変更してリニューアルスタートです!

昨年、北海道でアイヌ文化に触れ、そして今年、南の果て・久高島を訪れた。 その二つの体験が、私の中で静かにひとつにつながった――北と南、遠く離れた地に息づく「魂の共鳴」を、肌で感じた記録である。

【魂の最果て】ニライカナイとカムイモシリ:久高島と北海道に響く「縄文の魂の秘密」

日本列島の最北端、北海道のアイヌ文化。そして最南端、沖縄の琉球文化。 地理的な隔たりは大きいはずなのに、現地で向き合ってみると、その根底には驚くほど深く、根源的な共通の響きがあることに気づかされる。

言葉の響き、自然への畏敬、そして神話の構造――。 それらは、私たちが持つ「日本人のルーツ」、その深層に宿る共通の精神を今に伝えている。 特に、琉球の聖地・久高島で風に吹かれたとき、私は遠く北のアイヌの大地で感じたあの世界観が、同じ源から流れていることをはっきりと感じ取った。

島全体が聖域になっていて、各所に祈りを捧げたるための拝所や祭祀場が点在する久高島

1. 共通の精神基盤:万物に霊が宿るアニミズム

琉球とアイヌの文化に触れてまず心を打たれたのは、自然界のすべてに霊的な力(神)を認めるアニミズムという考えが、生活のすみずみにまで根づいていることだった。

  • 琉球文化: 海の彼方の他界ニライカナイから、生命と豊穣の神々が来訪する。特定の森や岩は御嶽(うたき)として神の降臨地とされ、人々は自然とともに生きてきた。
  • アイヌ文化: 自然界のあらゆるものがカムイ(神)であり、動物や火、水は人間に恵みを与えるために人の世界を訪れると考えられている。

この「自然こそ神々の世界である」という考え方は、本土文化が形づくられる以前から受け継がれてきた、縄文時代から続く古層的な精神性の証だと感じた。

イザイホーが行われる最高聖地クボー(フボー)御嶽 神女以外絶対立入禁止の禁足地(ロープ外からの撮影)
 
イシキ浜

2. 言葉の響きと神話の構造:アマテラスとの共鳴

現地で耳にした言葉や神話の語りにも、共通する“世界の見方”が滲んでいた。 それは日本列島に古くから流れる、普遍的な思想そのものだと感じる。

  • 自然描写に基づく言語: アイヌ語の「ナイ(川)」や琉球語の「ムイ(森)」のように、地名が自然への「説明書」のような役割を果たしている。人と自然が一体であった時間の記憶が、今も言葉の中に息づいている。
  • ニライカナイとアマテラス: 琉球のニライカナイは東の海の彼方にあり、太陽が昇り、生命と光が再生する異界だ。これは、アマテラスが岩戸から現れ、世界に光と秩序を取り戻す「光の再生」の神話と深く共鳴している。海の彼方から恵みが循環するという思想は、本土の「常世の国」ともつながっていると実感した。
琉球創世神アマミキヨが最初に降り立ったとされるハビャーン
船にはたくさんの人がいたが、この岬ではただただ一人、自然の中に身を置いて遥か昔の記憶に想いを馳せる

3. 【核心】魂の循環:イザイホーとイヨマンテの共鳴

そして、二つの文化の精神が最も純粋な形で現れるのが、久高島のイザイホー北海道のイヨマンテだ。 その場の空気に身を置いたとき、「魂の循環」と「異界との契約」という共通構造が、言葉を超えて理解できた。

祭祀名 異界への行為 儀礼の目的(循環の核)
久高島のイザイホー 女性が七つ橋を渡り、ニライカナイの神力を得て帰還(行きて帰りし)。 女性(神人)神の霊力(セジ)を更新し、島の豊穣と男兄弟(海人)の安全を維持する。
アイヌのイヨマンテ カムイ(熊)を人の世界に歓待し、その魂を神の国へ送り返す カムイとの契約を更新し、カムイが次も肉と毛皮という恵みを持って現世に来ることを約束させる。

両祭祀は、「人間社会の存続のためには、非日常的な儀礼を通じて異界と接触し、生命や霊力を交換し、魂の循環を保証しなければならない」という縄文アニミズムの思想を今に伝えていると、私は深く感じた。

  • 女性の霊力: イザイホーは女性が霊力(セジ)を更新し、オナリ神(姉妹神)として男を守護する力を得る儀式であり、古代日本の女性祭祀者(ノロの原型)の重要性を教えてくれる。
斎場御嶽三庫理
斎場御嶽で遥拝してから久高島の旅が始まる

【結びに】最果ての地に宿る日本人の魂

イザイホーとイヨマンテは、それぞれ農耕・海洋文化狩猟・漁労文化という異なる生活基盤の上で育まれながらも、同じ「縄文の魂の基盤」から生まれた二つの儀礼だと私は思う。

本土から遠く離れた最北と最南の地が、日本列島の最も古い精神のルーツを守り続けてきたという事実は、私たちが「日本」というものを理解するうえで、何よりも大切な鍵を握っている。

北の大地と南の聖地。両方の風を受け、祈りに耳を傾けたとき、私は確信した。 久高島や北海道で感じ取った共通の「魂の気配」は、数万年にわたり日本列島に息づいてきた共通の生命観と世界観そのものだったのだ。

久高島はレンタサイクルで2時間ほどで回れる大きさ

当然ながら集落があるのだが、滞在中町中で住人と出会う事はなかった

Photo by EOS R5mk2 / RF24-105mmf4L IS USM / RF14-35mmf4L IS USM