「奇跡」林真理子 ★☆☆☆☆
▼歌舞伎役者片岡孝太郎さんの元妻、博子さんが
写真家の田原桂一さんと不倫・再婚、その後田原さんが亡くなるまでを描いた実話▼博子さんがママトモである林真理子さんに「自分の半生を是非本にして欲しい」と頼んで出版に至ったようです▼ページ数も少なく博子さんが綴った日記からファクトだけを抽出したような淡泊な作品ではありますが、そこにこそ林さんの狙いがあるのではないかと私は勝手に推測しています
▼ネットなどの感想を見ると概ね博子さんに厳しいものばかり
▼小さな子どもを巻き込んでの不倫、彼女が日記に綴った心情の吐露も違和感だらけでこれは"純愛"と呼ぶにはかなり無理がある
のではないかとの意見も多い▼林さんは読者に反感を持たれそうな部分に何の注釈もフォローもしていない。ある意味実にクールな作品で、そこにこそ林さんの狙いがあったのではないかと私は邪推しています
「きたきた捕物帖」
宮部みゆき ★★★★☆
▼時代小説に基軸を移して久しい宮部みゆきさん
本作は「生涯、書き続けたい捕物帖」なんだそうです
▼江戸深川を舞台に二人の「きたさん」が数々の難事件を解決
していくという物語、登場人物たちのキャラクター設定も素敵
▼謎解きに怪異、江戸庶民の人情も堪能できる
連作時代ミステリーにまたまたはまってしまいそうです
「すずめの戸締まり」 新海誠 ★★☆☆☆
▼映画の公開前に読んどこ!という事でサクサクと読みました
▼東日本大震災をモチーフとした観念の世界
▼君の名は・天気の子同様自然災害に立ち向かう女子高校生と
青年の物語▼映画は11月11日公開、物語自体は伏線が回収できていないような気がしていますがしゃべる猫「ダイジン」や
青年が姿を変えた「椅子」などのキャラクターがどう映像化されているのか楽しみであります
「幼な子われらに生まれ」
重松清 ★★☆☆☆
▼うーん、なんでしょう この物足りなさは
▼再婚相手の2人の連れ子(共に女児)との関係に悩む37歳の
サラリーマン▼別れた妻との間にも娘が一人いて定期的に会っている▼そんな中再婚相手が妊娠。自分にとって4人目となる子どもがもうすぐ生まれることになるのだが▼当然夫、そして父親としての負担も増える▼精神的に疲れていく男が逃げ込んだ場所は風俗店、そこで出会った女性に心癒されていくという展開
▼どんな結末を迎えるのかと期待したが・・結果何も解決しないまま物語りは終わってしまうのであります▼本の帯には「家族とは何かを問う感動の長編小説」とありますが、果たしてそんな
本でしょうか?
「残月記」小田雅久仁 ★★☆☆☆
▼なんとも不思議な世界観の3つの物語り。パラレルワールド。▼好き嫌いがはっきり分かれそうな作品です▼個人的には1作目「そして月が振り返る」が面白かったが、ネットなどの感想では
3作目、表題の作品「残月紀」を評価する声が多いようです
▼どの作品も月が持つ神秘の力がひっかかりとなっていますが
文章が実に冗長で読み進めるのに苦痛を伴う作品でもありました
▼一方でこの独特な世界観が癖になる人もいるみたいです。