先日、世界で初めて米国でブタの心臓を人に移植する手術が成功

・・というニュースが報じられた。その時ちょうどこの本を読んでいた。

「小説は本当だった・・」と驚きまくった本がこれだ

「黙過」下村敦史★★★★

▼臓器移植をめぐる医療ミステリー、最初は短篇集かと思いきや、

4つのミステリーが最終章で絡み合う。動物と人間「命の天秤」

▼人の命を救うため動物の命を犠牲にしていいのか・・

①大学病院の医師たちの出世争い②病院から失踪した患者の謎

③パーキンソン病の元官僚の詐病疑惑④養豚所で起きた不可解な

事件・・これらの点が最後見事に一本の線で結ばれる

▼異種移植の闇に迫るタイムリーで迫力ある作品であります

 

「宝島」(上)(下)」真藤順丈

★★★★

▼史実に基づきアメリカ統治下の沖縄の悲劇をサスペンスミステリー

タッチで描いた作品▼終戦前後日本政府に半ば見捨てられた沖縄

相次ぐ米兵による日本人女性強姦、それでも罪に問われない米兵。

▼父親のいないハーフの子どもたちも多く誕生する。

▼一方で米兵に頼らり生きていく女性たちもいる「反米派」と「親米派」

二分される沖縄の人たち、唯一共通していろは貧困

 

▼そこで上がった男たちの集団があった。彼らは「戦果アギヤー」と

呼ばれ米軍基地から生活物資を盗み出しては貧しい人たちに分配

▼神出鬼没の英雄となる一方で米軍からは追われる身

それが一層彼らを神格化していく▼ところがある時「戦果アギヤー」の

20歳のリーダー【オンチャン】が忽然と姿を消す。行方を捜す仲間や

恋人たちを中心に本土返還までの沖縄の悲劇を描いた作品です。

2019年の直木賞、山田風太郎賞、沖縄書店大賞の3冠に輝く

 

「かささぎ殺人事件」(上)(下)

 アンソニーフォロビッツ★★★★

▼英・サマセット州にある屋敷で家政婦が掃除機のコードに足を絡ませ

階段から転落死する。不幸な事故と思われていたが

▼名探偵アティカス・ピュントの登場で物語が動き出す。これが

殺人だとするなら登場人物の全てにその家政婦殺しの動機が存在

するのだ▼ピュントが真相に迫る中、新たな事件が起きる、上巻の

最後、ピュントが犯人が誰かわかった所で下巻へ続のだが・・・

▼上巻と下巻の視点のチェンジは衝撃的でした。こんな手法があるとは

「小説の中の犯人探し」と「現実世界の犯人捜し」その二重構造が

見事なのであります。アガサクリスティーをオマージュしつつ唯一無二の

発想と構成力に圧倒される作品です。

 

「検事の信義」柚月裕子★★★☆☆

検事のあるべき姿を描いた短編集▼無実を主張する被告を

弁護するのは弁護士だが公判検事・佐方は検事でありながら

被告の無罪を立証▼母親殺しで起訴された50過ぎの息子、

事実だけ見れば懲役10年の求刑が相当だが、坂田は事実より

真実にこだわる男、本来弁護士がやるような被告の情状要素を

自らの足で探し出す▼正しい量刑とは何か、検察の信義とは何か

事件の上辺に見える「事実」だけでなく、事件の裏に潜む「真実」

を追求する公判検事の4つの物語

 

「本所おけら長屋」(十七)

       畠山健二★★★★

▼ついに17巻に突入した江戸時代の長屋物語、貧乏を人情で

克服するおけら長屋の面々▼悪い奴は徹底的に懲らしめ、

悩める人には徹底的に手を差し伸べる▼次々起きる難題を

おけら長屋の面々のチームワークで解決していく

▼手の込んだ仕掛け、テンポのよい物語の中に謎解きも笑いも

涙も、感動もあり、4話全てが心地良い結末を迎えます