ペット飼育不可のマンションであり、私はアレルギー体質。
そんな私が、マンション内で迷い猫を保護した。
紛れもない「飼い猫」
洋服を着た、外来種の猫だった。
とある階の階段、とあるお宅の玄関前。
壁に頭を“スリスリ”している。
ここいらでは聴いた事のない甘えた声で泣いている。
誰かを恋しがっているはず・・・・
そう思って念のため、そのお宅を尋ねてみた。
すると
「まぁかわいいぃ ここはペット禁止なんですけど・・・
どうしたんですかぁ?」
間違いなく飼い主ではなく、猫の存在もしらなかった。
時は、午後11時30分。
こんな時間に一軒一軒訪ねるわけにもいかず、
マンションに入る住人にターゲットを絞り、
それが不発に終わると、ご近所の電気がついているお宅を訪ね、
また猫を飼っているお宅も訪ねた。
「箱を持ってうろうろしている人がいる」と不振がられる始末だった。
深夜になり、親切な方が付き合ってくれた。
自宅で猫を飼っているとかで、
肉球が綺麗な事、爪の手入れが行き届いている事、
オスである事、去勢が終わっている可能性がある事など、
無知な私に教えてくれた。
「どうします?このままにしておいたら帰るんじゃないですか?」
こんなふうに言われたが、
帰るどころが、自分がどこにいるのか、どこに行ったらいいのかさえ
わからない様子だった。
「置いていかれたかも・・捨てられたかもしれませんよ」
そう言われつつも、
“絶対 愛をいっぱい与えてくれる人をみつけるんだ!”と
不安をかき消すかのように、希望だけを口にし、心に強く念じた。
まだ大人になりたての小さな猫なのに、
洋服まで着せられるほど愛情をもらっていたはずなのに・・
悲しい気分になりながら、
意を決して夜通しする事にした。
時刻は午前2時を過ぎた。
空箱を用意し、大き目のバスマットを押入れから取り出し、
皿に水を入れ、
念のため、鮭を焼き、ラップに包んで持って行った。
この間、猫は階段でミャーと何度も泣き、私を探していた。
こうして一人と1匹の猫は、
マンションの最上階の階段で、夜を明かすのであった。
途中、警察に電話を入れ、飼い主から連絡がないか
預かってくれないかと問い合わせたが、
翌朝に保健所につれて行くと言う。
寒さと、腹立たしさで声が震えた。
“絶対守ってやる!誰が保健所なんぞに預けるものか!”
この季節に、フリースを着る事になるとは思ってもみなかったけど、
それはそれは寒かった。
アレルギー体質の私が、
きっと寒いであろう猫を、風から守るからのように、
寄り添っていた姿を、客観的に観察しながら、
その時には既に、里親を探さなくては・・・と気持ちが変わっていた。
午前4時前、東の空が白みかけ、
どんどんと、紺色の空から、朱色の輝きが見え始めた。
すると、箱の中にいた猫は、
私の膝に上り始め、朱色に染まり始めた東の空を、じっと見ていた。
こんな景色に光景は、この猫にとって初めてだったに違いなく、
美しく、不思議に思えたのかもしれない。
私も一緒になって感動していた。
新聞配達や、牛乳配達の人がやって来た。
そろそろ一緒に降りて、飼い主&里親探しを始めなくては!
道行く人を一人一人止めて話しをしていると、
何故か一階の物置プレハブの隙間に入りこみ、
こちらの呼びかけにも答えなくなった。
深夜に付き合ってくれた方が、心配して缶詰の餌を持ってきてくれたが、
それでもこちらには来なかった。
朝になって眠くなったのか、疲れてしまったのか・・・
それからしばらく、管理人が来るまでの間、
見失わないように、季節外れのフリースを着て、
疲れ果てた人間が、怪しそうに立ちすくんでいる。
ご近所の知り合いの方が、
愛犬と朝の散歩のためにこちらに歩いてきた。
見るに見かねたその方が、一時的に預かってくれるという。
本当にありがたかった。
管理人がやって来て、
「警察に連れて行ってもらえばいいのに」と言う言葉にショックを受け、
そのままの勢いで、預かってもられるお宅に直行した。
自宅に戻り、着ていた洋服を洗濯し、
お風呂に入り、猫の毛が落ちているかもしれない部屋に掃除機をかけ
拭き掃除を済ませ、保健所に迷い猫の登録のために電話を入れた。
不愉快な事に、この4月の1日から、
この地域(県)の決まり事として、保健所に預けられた猫1匹につき、
¥2,500は必要となるとの事で、
なんでもお金なんだ・・・と益々 不愉快になった。
簡単に動物を捨てるなと言う意味。
愛護センターに送られて、殺処分までの間の食費やら、
飼育費用。
またセンターの運営費の諸々・・・と
県や市のお金だけではやっていけないんだろうが、
とにかく、役所仕事の不愉快さと、
動物の命を簡単に左右する人間のおぞましさに、
気持ちが落ち込んだ。
午後12時近くになってようやく仮眠をとり、
その後、近所のお宅に、一軒一軒猫の飼い主と、
里親探しのために歩き回った。
チラシを作ってくれるという親切な方までいて、
今回の事で数名の方に,
言いようのない温かさを感じた。
預かってくれている方の家には犬がいて、
犬のためにも猫のためにも
ストレスが心配になり、餌を購入しては、
お宅にお邪魔をして、猫の様子を見てはため息をついては帰り・・
ネット、チラシ、いろんな方法を考え、
飼い主はほぼ諦め、
とにかく、愛情をもって、最後の最後まで
ともに生きてくれる人を里親に!!と
行動したが、なかなか上手くいかなかった。
けれど、全く期待していなかった保健所から連絡があり、
「飼い主さんらしき人から問い合わせがありました」との言葉。
喜びつつ、猜疑心を持って、その方からの連絡を待ち、
その上、写真を見せてくれるように伝え、
お宅までお邪魔し、どんな環境なのか、
どれくらいの想いがあるのかを確認した。
私の猜疑心が晴れ、今度は嬉しさと幸せがやって来た。
“愛されてるんだなぁ・・・”
帰宅後、迷い猫の写真をお返ししようと思った。
いつかまた、猫が迷い猫になった時、
すぐにでも探せるように。
それに、猫への愛情が芽を出してしまってるから、
どんどん成長しない為にも、持っていてはいけないからね!
あの夜の代償は、いろんな所に出てしまった。
両手の蕁麻疹。
両手、両足を蚊に刺され、
犬のノミだかなんだかわからないが、数箇所に嫌な痒みが残った。
いい思い出だ!
いいお勉強だ!
いい人生経験だ!