みなさん、こんにちは。キラキラご訪問、ありがとうございます。

 

小学校で特別支援学級の担任をしています。 

また、特別支援教育コーディネーターも兼務しています。

わが家には息子が2人。兄は知的な遅れを伴う自閉症です。

 

障がいがあるお子さんや、その親御さんの気持ちに寄り添って

支援していきたいな ─── と思っています。

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【親として本当は支援が欲しいが、支援級に在籍はしたくない場合】

ある日の放課後、普通学級担任のT先生から、ふと声をかけら

れました。

 

 

 

Y君は、T先生の受け持つ普通学級に、在籍しています。

 

 

 

話を聞いているのか、いないのか…、少なくとも、話し手

の目を見て聞くことはできていません。要所、要所でうな

ずいたり、ハンドサインなどの反応も全くありません。

 

この状態って、…白昼夢でもみているみたいな感じ…

 

ノートに落書きはありませんし、窓の外の景色やある特定

の物を凝視している様子でもありません。

 

一言で言えば、魂の抜け殻みたいな感じです。

 

 

 

 

 

 

こんな様子が時々ありましたので、7月の1学期末個人懇

談会でT先生は、お母さんにお話をされたそうです。

最近持ち帰るテストの点数が良くないことは、お母さんも

ご存知でした。

学習課題のプリント(計算プリントや漢字練習プリントな

ど)は、途中でほったらかしのものが家に置いたままにな

っていることがたびたびありました。

学校では、机の中のお道具箱に、いつ出された課題か分か

らない、くしゃくしゃになったプリントが、たくさん入っ

ていました。

 

T先生は、提出チェックをきちんとされているので、出て

いない課題を毎日のように催促をし、「なくした。」と言

われると、すかさず新しいものを渡していました。

最近では「家に忘れてきた。もう仕上げてある。」と言わ

れても、これまでの経験で、持って来ないことは分かって

いるので、

「今、新しい分を渡すから、休み時間にやって、今日中に

提出しなさい。」

と、あの手、この手で対応されていました。

 

しかし、休み時間にプリントを渡されても、大部分が分か

らないし、一部できる所があっても、やる気が全く起こら

ないようで、ただ休み時間を奪っているだけにしかなって

いないのは明らかでした。

 

「学習意欲が低下していること」については、お母さんも

(本当に、その通りだなぁ…。どうしたらいいのか…。)

と悩まれていたので、すぐに「中央児童相談所」に面談予

約を入れられました。

 

 

 

待つ方の身としては、一日千秋の思いです。…あれからよ

うやく順番が巡ってきました。なんと、はや3ヶ月も経っ

ていたのです。

長い長い月日を待って、ようやくこの日がやってきたのです。

 

 

 

(当たり前でしょう。受けなければ何のために3ヶ月も待

ったのか。受けずに何か、メリットはあるのか?)って聞

きたい気持ちです。

 

児童相談所からは、B2という結果をもらいました。

B2…軽度の知的な遅れが認められると言うことでした。

 

手帳は…。申請する気になれなかったそうです。

 

だって、こんなに普通に話すし、周りの様子もこの子なり

に理解できている。友達関係もわるくはない。人に危害を

加えるわけでもないし、親の目から見て、とても優しい、

いい子なのです。

 

ただお勉強が、ちょっと苦手なだけ…。そう思ってきまし

た。

 

勉強のやり方が分かったら…。塾に入ったら…。そこそこ、

ついて行けるようになるのでは…。

 

そんな僅かな望みを打ち砕くかのように、自治体から手帳

がおりる…。自治体のお墨付きの障がい児という烙印を押

される…。

親が拒めば、手帳はおりない。

「親が、子どもを障がい児にするか、しないか」を決める…。

なら、いらない。…わが子を自分の手で障がい児にしたく

ない…。

 

そう、思われたそうです。

 

 

 

専門機関に相談した時、「医療方面からのサポートも必要

ではないか…。」と言われました。

そこで、家の近くの小児科へ行きました。

(小さい頃からお世話になっている、かかりつけの病院で

す。)

 

 

 

児相の検査結果を信じないわけではありませんが、「念の

ため」とお医者さんは仰いながら、また検査を繰り返しま

す。

なぜなら、今回の検査の目的が、児相とはまたちがうから

です。

 

児相では、主に知的な遅れがないかどうか、あるとすれば、

どの領域で、どんな困難さを抱えているか…などを調べま

す。

 

でも、病院では、お薬を出すために調べます。(それだけ

ではありませんが、お薬を出せるのは病院だけなのです。)

 

どのような困った特性があるのか、それはどれくらいの頻

度で、どの程度なのものなのか、これまでの成育歴なども

参考にしながら、発達障がいによる特性なのか、生活環境

や、養育の在り方による影響なのか…などを見極めるため

に、発達検査をまた行うのです。

そうしないと、薬の種類や量を決める上で、児童相談所だ

けの検査結果では、実態に合わないお薬を出してしまうこ

とがあり、状態の改善どころか、悪化にもつながりかねな

いから、どうしても慎重にしなければならないのです。

 

 

 

これは、「学校にとって大きな負担」です。なぜかと言う

と、多くの職員が引き継ぎ、引き継ぎ、この児童の様子を

見ていくからです。

 

例えば、自分が行った時に、すでに大泣きをしていたとし

ましょう。

前についていてくれた先生は、次の時間に担当する子の教

室移動や、トイレ介助のため、すでにいません。

 

(重度の遅れがある子や、肢体不自由の子の場合は、次の

先生が来るまで、今の先生が待つ約束になっています。)

 

まわりの子ども達から事情を聞きたくても、休み時間なの

で、ほとんどの子が外に遊びに行ってしまって、誰もいな

い状態です。

本人から事情を聴きたくても、大泣きで説明ができなかっ

たり、もともとうまくお話ができなかったりする子もいま

す。

そこへ、病院からのアンケートです。誰が書くのか、どう

やって調べて書くのか…。

きちんと調べて記録しようとすればするほど、大きな負担

に感じます。

なぜなら、アンケートの大半は1ヶ月もの記録を毎日とり

続けなければならないからです。(お薬によって、効果が

2週間後ぐらいから出始めるものもあるため、どうしても

長期に観察をしなければ正確には効果が分からないのです。)

 

だから、その大変さを知っているお医者さんは、わざわざ

学校迄お越しになり、先生方にきちんと目的や結果の使い

方を説明をされ、丁寧に協力を求められます。

(中には、アンケートをポンと親御さんに預けて、親御さ

んの口から、協力を求めるお医者さんもいます。)

 

もともと、お医者さんのやり方に疑問を持っている教員の

場合、(協力しません。と、断るわけにはいかないし、か

と言って、大きな負担は嫌だし…。そうだ、適当にチャカ

チャカッ…と、印象だけ書いておこう。)と、なります。

 

もちろん、お医者さんの仰ることはもっともですし、進ん

で協力していかねばならないのも十分理解できます。

でも、あまりにも大変で、大きな責任を伴う作業が長期に

渡って続くため、難色を示す先生方が多いのは事実です。

 

 

 

そんなある日、ご両親が、児相で行った発達検査の結果を

携えて、「これまでの経緯説明と、アンケート依頼」のた

めに、学校へやって来られました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでの一連のお話を聞かせていただき、ご両親として

は、できることを、一生懸命にやられている…と感じまし

た。

ただ、支援級へ入級したい…と言うような話には全くなら

ず、これまで通り、普通学級において、普通学級担任が引

き続き、一人で支援を行っていかねばならない…という方

向性が、はっきりと見えてきました。

 

 

ここで普通学級担任は、とうとう黙ってはいられなくなり

ました。

 

 

ご両親も、病院の先生と打ち合わせをした方針を守ろうと

し、必死な感じが伝わってきました。

 

 

 

コーディネーターは、両者の折り合いを考えつつ、話を進

めます。

 

 

 

普通学級担任にしてみれば、これまで色々手を尽くしてき

たY君が、支援級に入級し、今後は支援級の在籍児童とい

うことで、分のお役は御免になると思われていたのでは

ないでしょうか。

 

しかも、今回Y君は、普通学級に在籍はしているものの、

※「教育的配慮の要する児童」として明らかになってしま

いました。

 

※(発達検査の結果、B2やB1…などの知的な遅れが認

められたり、障がい名としての、診断名がついたりした児

童のこと。)

 

つまり、在籍が普通学級ですので、普通学級担任が「個別

の教育支援計画」「個別の指導計画」をかかねばならない

のです。

 

以前、ブログにも書きましたが、この書類は作成に時間が

かかります。普通学級の先生方に作成や提出を求めると、

とっても嫌がられます。(慣れていない書類を書くのは、

誰でも気が重いものですが、いろいろ迷った挙句、時間を

さいてようやく仕上げても、書類のあちらこちらに不備が

あり、やり直しを求められることは、屈辱でしかないので

す。)

これを書くのが絶対嫌。また、年3回の校内研修で「取り

組み報告」をするのも鬱陶しい。なので、「うちのクラス

には要配慮児童が、今年はいません。」と高らかに宣言す

る先生もいるぐらいです。

 

「去年の担任は、この子を要配慮児童として名前を挙げて

いたのですが…。」と、年度初めの引き継ぎ連絡会で、今

年の担任に言うのですが、「これくらいでイチイチ要配慮

児童に挙げていてどうします。この程度で要配慮なら、ク

ラスの半分は要配慮になってしまうわ。カンラ、カンラ…。」

と、豪快な笑いを飛ばし、きっぱりと断る人もいました。

私は、(ただ、めんどくさいだけじゃない?)と思いなが

ら…。

 

 

 

普通学級担任は、引き続き自分が責任をもって、生活指導、

学習指導、集団育成をしていかなければならず、ムッとし

た表情のように、私には感じました。

 

 

 

最後までおつき合いいただきまして、ありがとうございま

した。