いままでの様にジェンダー視点で宝塚歌劇を語ると色々と大変な事が…!

 

ただ、もちろん急激な改革は困難なのが予想されると思います。

 

日本人は特に「私が味わった苦しみはお前も味わうべき」というスパイト行動をとる人が欧米に比べて非常に高く、

それが同調圧力として強く機能し、変革が行われにくい事が指摘されているとのこと…

 

空気を読む、とかの裏返しなんですね…💦欧米や中国よりも圧倒的に日本人がいじわる!というデータには驚きました(笑)

確かに今までの厳しい伝統を受け継いできたんだ!という思いは宝塚にはありそうですよね(笑)

【参考:西條辰義. 2005. 日本人は「いじわる」がお好き?!. ; 中野信子 & ヤマザキマリ. 2021. 生贄探し. pp38-43】

 

こちらの本に面白く書かれています。

中野信子 & ヤマザキマリ. 2021. 生贄探し

 

 

また、宝塚歌劇は商業演劇であり、商業的に成り立っていくということが大前提だということは大きいと思います。

 

未婚の女性集団ということや、男役がトップスターを演じる事は

 

外部や他との差異化

 

という非常に大きな商品価値を持っているからです。

 

また、これらのシステムを理解した上でタカラジェンヌは入団するのも退団するのも本人が選択しているわけです。

 

未婚であることや閉鎖的な情報管理は、世間の格好の餌食となりうる若い女性という社会的弱者を劇団が守る利点もあると考えられます。

 

ただ前述したようにLGBTQA+や多様性や女性の働き方に理解のない行動と捉えられると、法的リスクやイメージダウンとなる可能性がある部分には対処が必要なのではないかと考えます。



そこで今後、どの分野でもジェンダー視点を取り入れる指針として大切なのが

 

ケアの精神

 

と言われています。

これはすごく大学院の授業でも取り扱われていました。

文化にケアの精神…?と思いますが、例えば劇場のバリアフリーや無料コンサート、配信、フリースペースなどもケアの精神に注目が集まってから増えたようです。

 

Careという言葉には沢山の意味があって、日本語のケアだけではなく、すべてを包括するような大きなイメージがありました。

こちらの本は論文に入りきりませんでしたが、ケアの意味や、ジェンダー問題は育児や介護にダイレクトにつながっているという事が分かる本でした。

Joan C. Tronto.2015. Who Cares?: How to Reshape a Democratic Politics. ケアするのは誰か?: 新しい民主主義のかたちへ

 

 

 

 

そしてそれを落とし込むには交流や双方向性が重要なのだなと感じました。

Mora et al. (2014) は持続可能性を達成するために必要な条件として、多様性を維持する事だと述べ、それにはパートナーシップや対話が重要だといいます。

【参考:Mora, E., Rocamora, A. and Volonté, P., 2014. ‘On the issue of sustainability in fashion studies’. International Journal of Fashion Studies 1(2): pp. 139–147】

 

宝塚歌劇創設当時、機関紙『歌劇』は宝塚歌劇に対する批判や違った立場からの意見も積極的に掲載され、論争が展開されていたようにですが、現在ではあまりファン等の批判を受け入れる姿勢があまり感じられないのは残念な所だなぁと。

 

このような対話やパートナーシップを築くには「人」を尊重するケアの精神が必要だと思われます。

 

Chatzidakis et al (2020) によればケアとは全ての関係において、思いやりと連帯を育む事だと述べています。

【参考:Chatzidakis, A., Hakim, J., Littler, J., Rottenberg, C., & Segal, L. (2020). From carewashing to radical care: the discursive explosions of care during Covid-19. Feminist Media Studies20(6), 889-895.】

 

男女二元論否定の背景にも性自認を重要視するという自分や他者の考えを尊重するものだと思うのです。

 

小林一三は「事業は人なり」と言っていますし、

【参考:小林 一三., 2016.逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想. 講談社学術文庫】

 

異性装の原点でもある「人を喜ばせる」事が大切なのではないかと考えました。

 

タカラジェンヌ達は入学当初からは別人のような変貌を遂げます。

 

男役、娘役に関わらず宝塚歌劇でしか学べない事を学び、努力を惜しまず成長する姿が見られます。

この人としての成長をファンは応援し、感動し、自身も感動や学びを取り込んで成長するのではないか、と。

 

文化とは、私達が消費する既製品ではなく、私達の多様な実践の中で作るものだ

【参考:Storey, J. 2003. 'Popular Culture as an Arena of Hegemony', Inventing Popular Culture: From Folklore to Globalisation. Blackwell. p.59】

社会の変化に適応しつつ、素晴らしい舞台や空間を作り、よりタカラジェンヌが豊かに輝け、その姿をファンが楽しめる、これからもそんな宝塚歌劇であってほしいと思います。