円安でインバウンド客は増加しており、日本で経験した日本食が米国で人気となっています。高級日本食レストランはフレンチやイタリアンに並ぶ勢いで伸びていくと予想するアナリストも出てきました。

 人気は寿司・ラーメン・餃子です。特に寿司は圧倒的で訪日外国人が滞在中に食べた日本料理では68.3%が寿司をあげています。また、ラーメンも豚骨ラーメンを中心にメジャーな麵料理として知られており日本の様々なラーメンの味に外国人の興味は高まっています。

 日本食ブームは1960年代後半に米国で起こり寿司バーが人気になったことや連邦政府が脂肪分やコレステロールの少ない食生活を推奨したことがきっかけと言われています。米国では現地の人の嗜好に日本食を合わせたスタイルも人気で手巻き寿司のカリフォルニアロールやテリヤキソースを使った料理がその代表例です。

 本物志向も目立ち、わざわざ日本食材を空輸して使った高級日本食も続々と出ています。ニューヨークの高級すし店SUSHI NOZでは手巻き寿司が1本1800円から、海鮮丼が9300円です。寿司ネタを日本から空輸で送ることもありますがコストがかかっても日本で食べた同じ味を米国でも食べたいというニーズが高まっていると思われます。

 実際、米国の高級すし店SUSHI NOZでは日本を訪れたことがある米国人が顧客の主流で2018年の顧客一人当たりの単価は300ドルでしたが今年は550ドルと一客単価が大きく上昇しています。ミシュラン一つ星だった2018年から2023年は二つ星を獲得し、予約は常にいっぱいの状況となりました。

 ニューヨークの高級日本食店は2016年に10店でした。2023年には200店に増えました。円安もあり、日本を訪れる米国人は今後も増え続けると予測されています。日本で本物の日本食を経験した米国人は自国で同じ味を食べたいとなり、今後も高級日本食店は増え続けると予想されます。

 外食チェーンも出店を加速させています。大戸屋はランチ13ドル(2000円)で安いと米国人に受け止められています。ヘルシー志向の高まりから日本食をランチに選ぶ傾向にあるようです。大戸屋を傘下にもつコロワイドグループは米国に69店を展開させています。

 米国にある日本食レストランの数は2022年に2万3000軒ですが、2030年に3万軒、2050年には10万軒に拡大すると予想されています。2013年に日本食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのをきっかけに海外へ進出する日本食レストランが増えています。海外における日本食レストラン市場は国内よりも拡大傾向にあります。国内市場が少子高齢化を背景に市場縮小の危機を迎えた中、日本食市場の突破口は海外にあります。

 成功事例は「日本の味をそのまま再現する」にあり、インバウンドをきっかけに日本食を食べたいというニーズに応えたことにあります。しかし、本物の日本食を海外で提供するには人材育成がカギです。既に寿司職人の争奪戦が繰り広げられています。世界中に数多ある中国人や韓国人の経営する「似非日本食レストラン」が跋扈すれば日本食ブランドの毀損につながります。本物の日本食を海外に広げていくには官民挙げて日本食人材の育成に努め、また支援が必要です。

 「現地の人が好むような味にする」のもひとつの成功事例としてあります。テリヤキのような味です。海外戦略で重要なポイントは事前の市場分析・競合分析やブランディング戦略を立てることです。コストを押さえつつ日本食というブランドを上手く売り出すことで高価でも顧客に受け入れられる価値を提供する海外ビジネスを展開することができます。コストを抑えて売上を伸ばすことで利益が大きくなり、それを原資に今後のさらなる海外展開をスムーズに行えます。日本食の輸出は日本の農産物や酒類等の振興につながるので大いに期待しています。