英国のチャリティエイド基金(CAF)によればインドネシアが世界でNo.1のチャリティ大国です。CAFは95年の歴史があり毎年世界の主な国を対象に3つの慈善基準(困っている他人を助けたことがあるか・チャリティに金銭を寄付したことがあるか・ボランティアに時間を割いたことがあるか)に分けてランク付けをしています。調査対象国は119か国です。

 インドネシアがチャリティ大国である理由には宗教があります。インドネシアの人口は約2億8000万人ですが、そのうちの2億3100万人がイスラム教徒だといわれています。イスラムの教義の1つでは個人がその富を慈善に使うことを義務づけています。金銭を貧しいものに与えるという行為は生活するために基本的な必要額よりも稼ぎすぎた年間の収入を浄化するというのです。また、この教えをもとに若い世代ではさらに簡単に早く安全に寄付できるデジタルプラットフォームができており、それがインドネシアの慈善活動を積極的にさせています。

 2位はケニアです。ケニアは世界の先進国リストでは108位です。人口5700万人の貧しい国がどうしてこのように他人に寛容になれるのでしょうか。理由の一つはインドネシア同様に宗教が要因にあり、もう一つは地域社会の結びつきの強さがあります。この国では国民の90%がキリスト教徒です。キリスト教の教義にはTithingと呼ばれる慈善の教えがあります。自分の収入の10%を教会やその他のチャリティに毎月寄付しましょうという教えです。

 3位は米国です。理由のひとつは宗教でケニア同様、自分の収入の10%を教会やその他のチャリティに毎月寄付しましょうという教えからきています。常にチャリティを呼び掛けられる環境にあり小規模な募金活動も多いです。高校の卒業条件にボランティア活動もあるくらいです。大学への寄付も盛んで卒業生を中心に恩返しということで寄付を行っています。

 それでは日本はどうでしょうか。残念ながら、日本は119か国中118位でした。3つの慈善基準にイエスと答えた人の割合は約20%で上位国とは3倍以上の差でした。寄付金は米国で34兆5948億円に対して日本は1兆2000億円と大きな差があります。一人当たりでは10倍以上の差があります。日本の場合、その半分はふるさと納税が占めており、本来、これは寄付というより節税のために行われているものだと思いますので本質的な寄付はもっと少ないと思われます。

 寄付行為の本質は寄付することは自分の幸せにつながる、他人にかけるお金は自分の救済につながるという考え方にあります。逆に言えば寄付に頼ると政府がやるべき弱者救済を怠りがちになる、貧富格差を放置することにつながるという考え方もあります。しかし、貧富格差をできるだけ少なくするフラットな社会は国民全体の幸福度を上げるというのは真理だと思います。

 日本のように節税を目的に寄付行為をする富裕層もいますが、「お金持ちが貧しい人に分け与えるべき」というノブレス・オブリージュ(貴族義務)の考え方もあります。毎月寄付を続けていると気持ちの変化も生まれると言います。自分には必要以上のお金があることの確認にもなります。社会に富を還元することが習慣になると自分の才能や能力も社会に還元したいと思うようになると言われています。収入の10%とまでいかなくても1%でも2%でも毎月、生活のなかで習慣的に寄付する文化を日本はもう少し頑張ることができるのではないでしょうか。