Windows PCメーカー各社がMicrosoftを筆頭に高いAI実行性能を持つ「Copilot+ PC」の販売を発表しました。「Copilot+ PC」の要件は(1)1秒間に40兆回の演算(40TOPS)以上の性能をもつニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)を持っているとMicrosoftが承認するプロセッサやSoC、(2)16GB以上のDDR5/LPDDR5メモリ、(3)256GB以上のSSD/UFSストレージ、の3点です。これらの要件はMicrosoftのAIアシスタント「Copilot」や生成AIなどのAI処理をデバイス上で拘束に実行するために求められているものとされています。MicrosoftはCopilot+ PCで「AIを実行する場所」として選択肢を広げていく考えです。

 MicrosoftのPCブランド「Surface」からはArmチップである米QualcommのSnapdragon X Plus/Eliteを搭載する「Surface Pro」「Surface Laptop」が登場するほか、台湾Acer、台湾ASUS、米Dell、米HP、米Lenovo、韓国Samsung ElectronicsもSnapdragon搭載のCopilot+ PCを発表しました。Windows 10のサポート終了を2025年10月に控え、各社、7年と言われるPCの買い替え需要をAI搭載パソコンで促進したいところです。

 Snapdragonは従来スマホ向けにQualcommが提供してきたSoC(System On a Chip) でCPUやGPU、通信モジュールなどがまとめて搭載されているArmアーキテクチャのチップです。ArmチップはWindows PC向けには主にMicrosoftがSurfaceシリーズの一部で展開してきましたが、米Intelや米AMDのCPUとはアーキテクチャが異なることからソフトウェアの互換性に課題があり広まってはいなかったです。

 Copilot+ PCカテゴリはSnapdragonに限らず米Intelや米AMDのCPU(Lunar LakeやStrixのコードネームで呼ばれるもの)にも今後適用されるとしていますが、今回の発表はSnapdragon X Plus/Eliteを搭載するマシンのみです。

 MicrosoftはSnapdragon X Eliteを搭載する「Surface Laptop」についてM3を搭載したMacBook Airよりも高速として先行してArmチップ「Apple Silicon」を搭載しているMacに対して優位性をアピールしています。Appleとの競争の相乗効果でPCの買い替え促進と市場活性化を期待したいところです。今後AIを使って生産性を革新する姿はどのように進化していくのか期待感があります。両社のデモンストレーションがどのようなものを見せてくれるのかも気になるところです。

 1秒間に40兆回の演算(40TOPS)以上の性能をもつニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)を搭載しているとどんなことが可能なのか。PC上でユーザーが見たことがあるものを過去にさかのぼってAIで検索できる「Recall」や「ペイント」アプリで下書きと説明からイラストをAI生成する「Cocreator」、備え付けの字幕がなくともオーディオやビデオコンテンツの字幕を自動生成する「Live caption」(英語や日本語など40以上の言語に対応)といった機能を利用できるようになります。

 誰も思いつかないアイデアを見つける。長い記事を要約する。より優れた文章を作成するための提案を提供する。これらはCopilot in Windowsがクリエイティブプロセスのお手伝いをできる、ほんの数例ですとMicrosoftは言っています。タスクを自動化し、より迅速にすべてをこなせるようお手伝いすることもできるという。その世界をソフトウェアだけでなく半導体テクノロジーとハードウェアを組み合わせて自社商品でデモンストレーションし市場をけん引する米国企業のフロンティア精神を垣間見たような気がします。