IMFによる2024年の実質GDP成長率をみるとランキングトップ20のうち約半数をアフリカが占めています。ニジェールが10.4%と最も高い他、ルワンダが6.9%、コートジボワールは6.5%、エチオピアとガンビアが6.2%と高い予測になっています。主要国ではケニアが6.9%、ナイジェリアが3.3%と予測する一方で南アフリカ共和国では0.9%と2023年に深刻化した電力不足などの影響で引き続き低成長を見込んでいます。

 2050年には世界人口の約4分の1を占める25億人まで増えると予測されているアフリカですが、その驚異的な人口爆発を背景としてアフリカ全土における経済規模は2025年には約4兆5000億円に達すると見込まれています。アフリカ連合の加盟国が参加するアフリカ大陸自由貿易圏協定が発効しているため、全加盟国が協定に加わると人口約12億人、域内総生産約2.5兆ドルの巨大市場となります。

 中国はアフリカへの投資を拡大しており、2020年の中国・アフリカ間の貿易額は約28兆円に達しています。アフリカ諸国は中国を戦略的貿易相手国や地域の重要プロジェクトへの投資国として支持しています。以降、中国国内の景気低迷もありアフリカへの投資額は減ってきていますが、それでもアフリカにとっての中国の存在は大きなものが依然としてあります。

 中国の圧倒的な存在感はアフリカからの原油輸出です。その輸出から得られる収入がアフリカの成長を促したともいえます。アフリカは世界に原油やプラチナを輸出し、世界から精製された石油製品、機械・車・家電などの工業製品、穀物や医療用品を輸入しています。輸入は人口増加を背景に増加傾向にある一方で輸出は石油・ガスの輸出額が不安定に推移するぜい弱な構造にあります。

 アフリカにとって中国は貿易赤字であり、対中貿易赤字を是正するため、中国にさらなる市場開放を迫っており、中国もそれに呼応してアフリカ産品に対する関税免除措置を拡大しています。この流れから中国とアフリカの貿易は今後も拡大していくと予測されています。

 今後、先頭を走る中国の背中を追いかけていくのはインドのようです。インドの対アフリカ貿易は年によってばらつきが大きいですが、全体的に増加基調にあります。インドは鉱物性燃料や輸送機器、医療用品、穀物など幅広い品目をアフリカに輸出しています。まだ中国のとの輸出額の差は大きいですが、インドがアフリカとの貿易で中国を抜く日が来るかもしれません。

 日本からアフリカへの輸出額が最も大きい品目は輸送機器(大半が自動車および部品)です。機械類や鉄鋼は伸び悩んでいます。輸出相手国は南アフリカにほぼ一極集中しており、近年、南アフリカの低成長率をみれば日本のアフリカ貿易が停滞しているのは当然の帰結です。輸出品目をより広く模索していくことが求められます。

 南アフリカ以外の国と貿易を太くしていく努力も必要です。日本は東アフリカ(ケニア・タンザニア・ウガンダ)での市場拡大を追求しつつ、エジプトやナイジェリア、モロッコ、アルジェリアといった市場でより売れる商品提供を模索していく取り組みが求められます。加えて競合相手の少ないフランス語圏アフリカ市場に向けても長期的な関係づくりを進めることも重要です。

 アフリカ進出する中国企業が約1万社に対して日本企業は約600社に過ぎません。しかし、人材育成や技術移転を大事にする日本企業の姿勢はアフリカにとって欧米企業や中国企業として違うものとして評価されています。各国のアフリカ市場争奪戦による影響はビジネス面ではまだ表れていませんが、デジタル分野の基幹インフラなど米国が強く意識して取り組みそうな分野では注意が必要です。

 アフリカはしたたかに中国や米国と距離を取りながら独自ポジションを築きつつあり、日本にとってもその間隙を縫ってアフリカでビジネスを拡大していく余地は十分にあります。グリーンビジネス(GX)・ヘルスケア・食糧・モビリティといったビジネスチャンスを日本企業の強みである個別化で新製品を開発・販売し競合他社と差別化できる可能性は十分にあります。アフリカの消費者は独自のニーズや嗜好を持っているので日本企業にとってのビジネスチャンスが大きいです。