コーヒー豆の価格が高騰し、仕入れ業者や喫茶店が苦境に立たされています。コーヒー豆には大別してアラビカ種とロブスタ種があり、世界全体の生産量の約60%、40%を占めています。違いは豆の糖度でアラビカ種のほうが多く、この糖が焙煎によって変化しコーヒーのおいしさが生まれます。ロブスタ種は糖度の低さが強い苦みや後味につながりますが、麦を炒ったような香ばしさ、控えめな酸味、甘いスイーツとの相性はアラビカ種とは違う魅力を放っています。

 米国農務省によると世界のコーヒー消費量は過去30年間で約7倍に増加しており、その最大要因は中国やインドなどの新興国です。経済発展とともに食生活の欧米化が進み日常的にコーヒーを飲む習慣が生まれ、人口の大きさから爆発的な需要増となりました。

 ロブスタ種のロンドン先物価格は最高値を更新しました。アジアでの消費拡大から低品質のものから高品質のものまでカフェの出店が増えています。ロブスタは今から100年以上前、1898年にアフリカの今後で発見されました。ラテン語で強靭や力強いという意味を持ち病気に強いのが特徴です。高温多湿の環境に適応することや1本の木からたくさんのコーヒー豆を収穫できる点が評価され世界中に広がりました。

 標高300-800mの低地でも栽培できるため、アラビカ種に不向きとされるアジア諸国での栽培が盛んでベトナムはロブスタの世界一生産高から近年は世界第2位のコーヒー豆生産国となっています。

 コーヒー豆は農作物ですので生産量に応じて相場は大きく変動します。生産量の多いブラジル・コロンビア・ベトナムで降雨量が少ないために生産量が減りそう、台風の影響で結実した身が落ちたなどのニュースが出ると相場は大きく変動します。直近ではブラジルでの生産数量、霜害懸念などで供給不足が問題となって相場価格が上昇しています。

 コーヒー豆生産に適した地域は赤道を中心に北緯25度と南緯25度の間に広がる熱帯・亜熱帯で「コーヒーベルト」と呼ばれています。しかし、地球温暖化により気温や湿度の上昇、「さび病」の流行、干ばつなどが発生し、これまでコーヒー豆栽培に適していた土地が適さなくなってしまう懸念があります。国際調査機関によると2050年までにコーヒー豆生産に適した地域が最大50%縮小し、コーヒー豆の供給が難しくなると予想されています。

 コーヒー豆農家は小規模であるため他の農作物への転作や農園の売却を余儀なくされることがあります。コーヒー需要をけん引している国のひとつが中国ですが、中国では今、ドリアンが人気、20年で消費量が10倍も増えています。ドリアンは「悪魔の果物」「フルーツの王様」と言われており、クリーミィで栄養価が高いことが中国で評価されています。中国人のバイヤーはベトナムのコーヒー豆農家を訪れ、ドリアンへ転作を薦めているそうです。

 中国と東南アジアは高速鉄道の整備や関税引き下げもあり、通商が進んでいます。コーヒー豆の需給ひっ迫、急激に進む円安の影響から日本の購買力はますます衰えています。コーヒー豆の高騰は喫茶店などの企業努力を超えて影響が必至です。