フィリップス曲線とは、英国の経済学者であるフィリップスが賃金と失業率の関係を調査し、そこからグラフに表された曲線のことを指します。グラフの横軸に失業率、縦軸に賃金をとったとき、右下がりの曲線で表すことができます。賃金が低いほど失業率が高く、賃金が高いほど失業率が低いとされました。

 失業率が高くなれば、労働市場では超過供給が生じていることになり、賃金も次第に低下していきます。逆に失業率が低下するにつれ、労働市場では超過需要圧力が生じるので賃金は上昇する傾向が出てきます。これはすなわち、物価上昇率(名目賃金上昇率)と失業率の関係を表しています。インフレが起こると失業率が低下し、逆に失業率が高いときは物価が下がることを意味します。

 オークンの法則とフィリップス曲線によれば、経済成長率が上がり、物価が上がれば、失業率が下がることがわかります。GDP(総供給)を引いた値を潜在GDPで割った値です。そして、実質GDPが大きくなるとGDPギャップが大きくなり、失業率が下がり、物価が上がります。

 JOLTS求人率とは、求人件数を就業者数と求人件数を足した数で割って計算される指標で、労働市場の需要サイドの状況(雇用主による労働力需要の充足感)を測ることを目的としています。これに対して、失業率は、労働市場の供給サイドの状況(家計による労働力供給の多寡)を見るための指標です。そのため、供給サイドの「失業率」だけでなく、需要サイドの「求人率」もあわせてみることで、労働市場の需給動向を総合的に判断することができるようになります。JOLTSのなかでも「求人率」の注目度が採用率や離職率などの他の指標よりも高くなっているのはこのためです。

 OECD景気先行指数(CLI)は、経済協力開発機構(OECD)が加盟国の国内総生産(GDP)に関連する経済指標から作成している景気動向の早期シグナルです。景気循環の転換点の兆候を早期に捉え、長期的な潜在水準に照らし経済活動の変動を明らかにします。景気に対し6-9か月先行するように設計されており、100が景気判断の境目とされています。

 消費者信頼感指数(CCI)は、消費者の経済に対するマインドをアンケート調査によって指数化した景気指標です。消費者の観点からその国の経済の健全性をはかるもので、個人消費やGDPとの相関性が高く先行指標とされています。4月の消費者信頼感指数は前月比97で市場予想の104を下回りました。

 米国の景気は2022年が景気後退局面で家計にとって苦しかったことがOECD景気先行指数をみるとわかります。これからが回復局面であることがみえてきます。足元の米国景気は強く、インフレも根強いため、利下げ期待は後退しています。しかし、インフレも景気も年後半には低下し、落ち着いてくると思われます。その際が利下げのタイミングなのでしょう。それでも日米金利差5%がドル円転換の分岐点と言われているのでこの水準に至らない限り、円安から円高への転換にまではいかないでしょう。