相場には4つのサイクルがある。「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」です。このサイクルは繰り返されており、株式相場の動向を確認するうえでも役に立ちます。

 金融相場は金余りを背景に上げる相場です。不景気で企業業績が悪化すると株価は下がるため、政府は景気と株価を刺激するために景気対策等を講じ、中央銀行は政策金利を下げるなどの金融緩和を行います。そうすることで、市中に流通する資金量を増やして金余り状態をつくります。金余りの資金は貸出となって設備投資に回るか、余剰資金として株式市場に流れ込むことにより「不景気の株高」を生み出すことになります。

 業績相場は景気や企業業績の上昇によって株が買われる相場です。「金融相場」の次のサイクルでは、金融緩和の効果で企業業績が回復し始めます。「業績相場」では、マクロ要因よりも個別銘柄の業績等のミクロ要因を背景に株価が上昇することが多いです。「金融相場」で割高だった株価指標も企業業績の回復によって割高感が薄れていきます。買われるセクターや銘柄は業績が景気拡大でメリットを受ける企業などが中心となります。

 「業績相場」が拡大しすぎると、金融引き締めのサイクルが来ます。これを「逆金融相場」といいます。政府や中央銀行の大事な役割の一つは、景気が拡大しすぎてインフレになることを抑制し、物価を安定させることです。そのため、景気拡大時は金融引き締めによって金利が高めに設定されます。金利が上昇すると、投資家の資金は株式市場から債券など固定金利の金融商品に流れるのが一般的です。「逆金融相場」では、株価は下降方向に調整をし始めます。注目されるセクターは、金利上昇でも業績に影響の出にくい無借金企業などバランスシートが健全な企業等があげられます。

 金融引き締めにより景気が下降し、企業業績が悪化して株価が下がるサイクルの後半を「逆業績相場」といいます。注目されるセクターは、景気と業績の連動性が低い医薬品やインフラ、生活必需品といったディフェンシブセクターです。また、金融セクターのように高金利が収益増につながるセクターも注目されます。

 相場は景気と金利のサイクルで4つの相場で循環することが多いですが、波の大きさやサイクルの長さを様々です。例えば、米国では2009年に始まった景気拡大局面は2020年まで続き、過去最長となりました。その間、低金利・低インフレで企業業績が安定的に拡大するゴルディロックス(適温)相場と呼ばれる業績相場で上昇局面が長く続きました。

 相場のサイクルが変わるきっかけになるのは、中央銀行の金融政策です。だからこそ、金融政策決定会合や金融政策に大きな影響を与える雇用統計などの重要経済指標が重視されます。注目する経済指標やセクターは、今の相場がどの局面にあるのかを意識することによって変わってきます。

 米国では高金利にも関わらず、企業業績が良い業績相場です。FRBが利下げを示唆していますが、インフレが収まってくるのかどうか、予断を許さない状況です。個人消費の動向、インフレ動向など豊富な米国経済指標を毎日チェックすることが大切です。テレビ東京の「モーニングサテライト」や日経の情報をよく見ておくことです。日本については、日銀が利上げするのか、金融緩和政策を継続するのか、こういった情報をチェックすることです。日米金利差で円安に向かっていますが、これは米国のFRBの利下げ次第で変わることができないのでしょうか。日銀総裁の発言や会合の議事録などにも注目です。