米半導体大手エヌビディアは、世界各国が自国での人工知能(AI)インフラの構築と運用を目指すことで、同社製品の需要が高まるとの見方を示しました。同社はインドや日本、フランス、カナダなどの国々と「ソブリンAI能力」への投資の重要性について協議しているとブルームバーグのインタビューに答えました。

 ソブリンAIとは、各国のデータ主権でのAIを指しており、国のデータは資産であり、それを自国内でAIというインテリジェンスに転嫁させます。自国の言葉、そして文化そのものを含めることで独自のAIを作り上げます。その重要性を各国は理解し、世界中で国家レベルでの取り組みを急加速させています。

 半導体メーカーとして時価総額世界一となったエヌビディアは、マイクロソフトやメタ、Amazonなどの大口顧客のAI投資にけん引され、年度の売上高が倍増したと推定されています。企業や政府機関に独自のインフラを構築するよう働きかけることで顧客基盤を拡大したいと考えているようです。

 小売業では、金融業に次いでAI投資に積極的ですが、マーケティング戦略や混雑状況の把握、不審者・不審物の監視、無人店舗などのためにAIカメラが活用されています。AIカメラの人物検知機能は、来店者の年齢や性別、店内の滞在時間、導線などを把握するのに適しています。

 在庫管理システムの自動化、データ分析の強化、パーソナライズされたサービスの提供、在庫管理や価格設定の自動化、人員配置の最適化にもAIは活用されています。過去の売上データや顧客の嗜好を学習し、需要の変動や傾向を予想できます。これにより適切な時期に適切な数量の商品を在庫に保持することが可能となり、過剰在庫や不足を防ぐことができます。

 監視カメラ等から取得した店内映像から、どの時間帯にどのくらいの人数が来店するかを把握することも可能です。適切な人員配置を行うことで人件費の削減につながります。このようにAI活用の有無で売り上げや利益に大きな差が出ると考えられています。AmazonやWal-Martはスマホアプリで商品検索に生成AIを活用しています。

 医薬品業界ではAI創薬に注目が集まっています。AI創薬とは、人工知能(AI)技術を活用して新薬の開発・研究プロセスを推進するアプローチをいいます。AIの特徴である大量のデータ処理を活かすことで、膨大な研究情報や分子データを効率的に解析でき、有望な新薬候補の発見や創薬プロセスのスピードアップが見込めます。

 AI創薬の市場規模は、2022年に30億ドルと評価され、2023年の35億4000万ドルから2030年までに79億4000万ドルに成長すると予測されています。年間600億ドルから1100億ドルの経済効果が見込まれ、初承認まで5年はかからないとみられています。製薬大手のAI創薬関連の提携件数は増えています。

 AIには、大量のデータから新たな知見を見出すことを得意とする特徴があります。特に近年では、機械学習に関する技術が大きく前進したことで性能が向上し、応用範囲も広がりました。AI解析の質は、使用されるデータの質によって決まります。そのため、製薬業界ではデータの統合でコラボレーションを模索する動きが増えているのです。創薬プロセスにAIを導入することで業務の効率化や開発費の削減、期間の短縮などを図ることができます。

 AIの利用は、業務の効率化や新たな商品・ビジネスモデルの開発につながることが期待されています。また、人間を煩雑な業務から解放し、人間ならではの創造的な業務に集中することを可能とすることによるイノベーション創出効果も考えられます。