人間関係学とは、人間の一生における人間存在を心理学、社会学、政策学、宗教学の総合的観点から研究している学問で人間の生活と人間、社会と社会生活の理解を目指している人々の要請、社会と時代の要請に応えてスタートした研究であり、今後の発展が大いに期待されています。

 人間関係論とは、組織運営上の課題(生産性の向上、モチベーションアップなど)を解決するうえで人間関係が重要な要因であり、その改善を図ることで個人の社会的欲求を充足させ、解決につながる、とする考え方を体系化した理論のことを言います。もともとは、メイヨーやレスリスバーガーなどによって提唱され、経営学となりました。ホーソン実験が有名で、20世紀初頭に科学的管理法のもと、アメリカでは組織における仕事の合理化や能率化が重要視され、生産性を高める方法が求められていました。

 人間関係を良好に築くためには、コミュニケーション、信頼、共感、思いやり、自己理解、自己肯定感、尊重が重要な要素になります。これらの要素を意識して行動することで、より豊かな人間関係を築き、心の健康と幸福感を向上させることができます。ラグビー憲章で掲げる5つのコアバリュー「品位・情熱・結束・規律・尊重」がありますが、これは全員が心を一つに一体感を持つ、すなわちOne Teamとなるための最も基本となる考え方、価値観です。対人関係構築力は、心を開いて歩み寄り、相手を理解しようと努め、違いを尊重しながら関わりあうことのできる力を言います。

 人とかかわる仕事には、ホテルやレストランなどの接客業務、介護士・看護師などの福祉医療関連業務、エステティシャン・ネイリストなど美容関連サービス業務、アパレル・量販店などの接客販売業務、コールセンターなどのオペレーション業務、営業職、企業や施設の受付、教師や講師など多岐にわたります。

 書店に行くと様々なコミュニケーション本があります。それだけ、コミュニケーションに悩みのある人が多いのだと思いますが、人との会話が苦手な人や、部下を束ねる管理職の人向けといった、コミュニケーションのプロによる解説で基礎を学べば、会話術・コミュニケーション力を鍛えられ、人間関係や仕事に活用でき、基礎的なノウハウを学べて大きな助けになると考えられているのでしょう。

 コミュニケーション本にもいろいろな種類があり、人によって悩みも様々です。沈黙が怖い人や会話が苦手な人向けに書かれた雑談力・会話力の本、話がうまく伝わらずに悩んでいる人向けに書かれた伝え方・話し方の本、話下手・恋愛下手な人向けに書かれた聞き方の本、ビジネスで悩んでいる人・新社会人向けに書かれたビジネスコミュニケーションの本、やる気を起こしたい人向けに書かれた自己啓発系の本などいろいろな種類があります。

 社会的営みにとって、それだけ人間関係構築は非常に大切で個々人にとって切実なのです。コミュニケーション力ひとつをとっても、協調性があり、自己表現能力が高いことがポイントで、コミュニケーションを通して私たちはお互いの価値観や考えを知り、信頼関係を築くことができます。信頼関係とは相手を信じて頼ることができる関係性を言います。マズローの欲求5段階説では社会的欲求が満たされて、人は精神的な充足感や安心感を得ることができます。

 営業力とは、人間関係構築力のことを指していると考えています。長期的な収益を増加させるためには、顧客との信頼関係構築を重視する「エンゲージメント型営業組織」の構築が必要となります。エンゲージメント型営業組織とは、顧客の要望に応える価値を提案するのではなく、顧客も気づいていないような価値を提案することを重視する営業組織です。エンゲージメントとは、複数のものが重要な関係性を結ぶことや結びついている状態にあることを指します。ビジネスにおけるエンゲージメントとは、「組織と従業員の関係性」や「自社と顧客との関係性」などを指します。エンゲージメント型営業組織を実現することで、長期的な売り上げを担保していくことが可能になります。

 人は千差万別で、個別に違います。対人スキルをとっても、コミュニケーション力(言語・非言語)、傾聴力、共感力、エモーショナル・インテリジェンス、人脈構築力、チーム育成力から構成されており、個々人によってそれぞれに得手・不得手があり、パフォーマンスも様々、時間軸からみた営業成績も様々です。

 人から信頼されるには信頼される人格を磨く必要があります。自分が相手を信頼する、人の話をしっかり聞く、ポジティブな姿勢をもつ、相手の立場を考えて行動する、相手と心地よい関係を築くことも必要な要素です。また、顧客や社内から信頼されるには、約束をしっかり守る、ミスを素直に認めて改善に向けて取り組める、主体性をもって行動する、誰にでも平等な態度で接する、成果を出していることが重要です。

 経営の持続性は、人間関係構築や顧客とのつながりを大切にすることがカギを握ります。そして、これは人という資源を使って、時間をかけて紡いでいくものです。そのために専門家による指導で基礎を学び、日々の会話術・コミュニケーション力を鍛え、人間関係や仕事に活用し、個人としての個別化から組織としての標準化につなげて組織能力を高めます。

 エンゲージメントが向上すると、従業員は企業への貢献意欲が高まり、熱意をもって業務に取り組みます。また、より効率的に業務を遂行できるよう知恵を絞るようになるため、生産性の向上、ひいては業績の向上が期待できます。エンゲージメントの高い従業員は、エンゲージメントの低い従業員と比べて約87%離職率が低いというデータもあります。優秀な人材の流出を防ぐことができ、さらには、採用にかかるコスト削減にもつながります。

 企業として専門業者に依頼してエンゲージメントサーベイを定期的に行う、ITを活用して常に顧客との関係性レベルの計測と制御、顧客属性の識別と分類を行って持続的な競争優位を築いていくのです。収益の8割は2割の優良な顧客から生まれていると言います。顧客と良好な関係を築いている企業は、そうでない企業に比べて高い収益性を持っており、なおかつ競争優位性も高くなります。今昔、経営の持続性とは、パレートの法則を活用して、従業員のエンゲージメントを高め、優良な顧客を創造し維持するための顧客との関係構築力のことを指しているのです。