異常気象は、ある場所・ある時期において30年に1回以下で発生する、大雨や暴風などの激しい数時間の気象から、数か月も続く干ばつ、極端な冷夏・暖冬までを含む現象を気象庁では定義しています。

 異常気象が毎年のように起こると、これは異常気象とは言えないのではないでしょうか。異常気象の原因は、地球温暖化と海水温度の上昇です。地球温暖化が進んで気温が上がると、大気中の水蒸気量が増えると考えられています。大気量に水蒸気量が増えれば、大雨や大雪といった降水量や積雪量の増加につながる恐れがあります。

 地球温暖化は、産業活動によって排出される温室効果ガスの増加が主な原因です。温室効果ガスは、地表から放出されるエネルギーの一部を吸収し、大気圏に滞留して気温を上昇させます。地球温暖化は、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象など、「自然のゆらぎ」と呼ばれる地球にもともと備わった性質によって、ある程度の確率で発生するものを強めます。

 エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、大気と海洋の相互作用により熱帯太平洋で生じる気候の変動現象です。エルニーニョ現象は、ペルー沖などの海水温が高くなる現象、ラニーニャ現象は同じ海域の水温が低下する現象です。

 気象庁の測定データによると、2023年は6月頃からエルニーニョ現象が継続しており、9月の海面水温の基準値からの差は+2.2℃と過去3番目の高さになっています。例年に比べ海面水温が高い状態で維持されていることから現在も継続しています。

 特に日本においては春から夏にかけての低温多雨や秋から冬の高温少雨を引き起こす原因になっており、冷夏による農作物の不作や雪不足によるスキーなどのウィンタースポーツ市場の運営困難などの経済的な影響が出てきます。

 エルニーニョ現象が世界経済に与える影響にも注目が集まっています。1982-83年と1997-98年ではおおよそ5兆円の経済損失が出ており、ココア、生乳、オレンジジュースなどの価格が上昇しました。

 2024年は6月から8月にかけてラニーニャ現象が55%の確率で発生するとの予想がされています。ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では、夏季は太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向があります。冬季は西高東低の気圧配置が強まり、気温が低くなる傾向があります。

 世界経済に与える影響として、ラニーニャ現象が原因で鉄鉱石・小麦などの商品相場が上昇することが挙げられます。夏が暑く、冬が寒いとなれば、エネルギー需要が高まります。商品価格が上昇し、今年後半は農産品価格の上昇に特に警戒が必要です。

 ラニーニャ現象が引き起こす風力発電の効率現象により、化石燃料による発電が増えることも予想されます。中東などの地政学リスクもあり、原油価格の高騰にも予想されると世界経済への影響は大きいと考えられます。