欧州では、社会福祉制度は、年金・介護・生活保護・子育て支援・障碍者福祉・医療・住宅の7分野としています。日本の社会福制度には、欧州に比べると住宅が欠けています。

 欧州では、高齢者を介護の対象とせず、尊厳をもって自立を支援する環境を守る住宅支援策が実践されています。例えば、年金受給者向けの住宅手当制度があります。この制度は、年金を受給する65歳以上の高齢者を対象としており、年金等の月額収入が18万円未満であることが受給要件となります。給付額は、世帯収入・資産・世帯構成、住居費の額などに応じて定めらます。

 また、北欧を中心に広がっているシニア向けコ・ハウジングも注目されています。コ・ハウジングとは、プライベートな生活空間と共有スペースを組み合わせ、近隣同士の交流を奨励するものです。

 さらに、高齢者特性(要介護度など)や経済状態に応じた様々な高齢者住宅(介護施設を含む)が整備されています。在宅においても、在宅入院や受け入れ家庭制度など、新たな「在宅・家庭」が高齢者の在宅ケアを支えています。

 日本の未婚率は伸びており、シングルマザーなどのひとり親世帯も伸びています。これに加えて就職氷河世代が高齢化するにつれて、単身の高齢世帯は増加することが予想されます。日本における孤独死増加の背景には、高齢化や核家族化による独居老人の増加といった問題が存在していますが、社会から孤立してしまう人が年齢を問わずに増えています。

 空き家も多く、増え続けている低所得の住宅困窮者に対して自治体は様々な補助を行う必要があるでしょう。わが国では、一般の者を対象とした住宅手当がなく、低所得の高齢者について給付もありません。

 家賃滞納問題もあり、国が認定する家賃保証会社を活用し、高齢者の居住サポート住宅を自治体が認定し、様々な補助をしていかなければならないと思います。高齢者の数は、家族、友人、隣人、趣味などのつながりの4つの人間関係のいずれもが希薄な状態にある「社会的な死」状態にある人の数を意味しており、毎日またはとても孤独を感じていると言われています。

 欧州においては、高齢者住宅を導入するにあたり、地域の高齢者を建築段階からプロジェクトに参加させ、高齢者を単に支援する側の存在としてではなく、一市民として市政に協力する主役として活躍できるように配慮しています。

 このように、高齢者を隅に追いやるのではなく中心で活躍させることで、自分は社会に貢献できる、ひとりではないと自己認識させることも、孤独・孤立を事前に防ぐための重要な観点といえるのではないでしょうか。

 高齢社会を支える住宅支援制度や高齢者の孤独・孤立防止対策が、今後、ますます重要な社会的課題となることは明白だと思います。