真夏のような眩しい日差しの朝、新しいバイトの初日を迎えた。
久しぶりの通勤電車の乗り換えや朝のラッシュの人混みが懐かしい。
躍動する社会の血液の一部にまた戻れたような気持ちで、乗り換えターミナルを足早に歩いた。
車で行けば20分の場所に、バスと電車で60分かけるのはちょっと無駄な気もするが、公共交通機関を使わないといけないから仕方ない。
通勤だとむしろこちらの方がスタンダードだ。
道ゆく人の波に自然と流される事で、最短の乗り換えコースがどの道が分かった。
あーどんどん新しい職場に近づいていく。
約束の時間より30分も早くついてしまって、街路樹の木陰でコーヒーを飲んで時間を潰す。
昨夜は2時間しか眠れなかった。
洗車のバイト初日の時もそうだったな。
どうも私は緊張すると眠れなくなるし、食べられなくなる。
朝食はゴールドキウイと水、サプリ、コーヒーだった。
カロリーはたったの54kcalだ。
こんな食事で午前中の仕事は大丈夫かと、新たな不安の種を蒔きそうなる。
いやいや大丈夫、大丈夫。
洗車バイトの時は、コロナワクチン2回目の副反応直後で寝不足でも乗り切れたから。
大丈夫、大丈夫。
自分自身に大丈夫の暗示をかける。
3分しか経ってないが、暑いからもういいかと職場に向かった。
店舗入口から穏やかな笑みを浮かべながら挨拶した。
私「おはようございます。今日からお世話になります、私と申します。よろしくお願いいたします。」
同僚になる人「おはようございます。こちらこそよろしくねー。制服出すからねー。あれっどこにあるんだっけ、待っててね。」
明るく対応してくれて、ひとまずホッとした。
バタバタと新しい仕事の話を聞きながら、対応していく。いきなりぶっつけ本番みたいな仕事になったが、会社のホームページを良く読んでおいて助かった。
マシーンの使い方とどこの筋肉に効いていて、どんな動作がしやすくなるか考えながら、面白い仕事になりそうだとワクワクしていた。
とりあえず初日という事で、職場の雰囲気と業務内容とスケジュールが分かっただけでいい事にした。
帰りは駅の乗り換えで道に迷ったけど、知らない街を歩くのはいつも楽しい。
知らない街がいつもの街になり、自分の世界も広がっていく。
知らない店もいつかは行きつけになるのかもと、想像しながらチラッとみていく。
「限定〇〇は売り切れました」
あーこういうの何となく気になる。
今度寄ってみようと、いつかの楽しみプランが増えていく。
過去の私が準備したプランが、今の私の楽しさや悲しみになり、未来の私の行動も変えていく。
ルートを間違えてバッドエンドを回避しながら進んで行くより、思うがままに進みたい私は、あまり画策しない方が納得して行けるのだと痛感した。
思うがままになる事はほとんどないから、自分で決められる事くらいは出来るだけ思うがままにしたい。
最寄駅からはバスで帰ってもいいのだけど、何となく心も身体も元気だったから歩いて帰った。
歩いて帰りたい気分だった。
思うがままに進んでいきたい。