映画の公開日までは1カ月もある。

予約は私がする事になった。


日程は、12月26日…


クリスマスの次の日だ。


バイトの年末最終日に、2人揃って休みを申請した。


舌が熱くなるのを感じて、ため息が出た。


火照ってるわ。


熱でもあるんじゃないかと、体温計で測るが平熱。


型にはめて落ち着かせた心が、ふわふわと宙に浮くようで、楽しみで仕方ない。


こんなに楽しみに映画の公開日を待ったことは、今まで本当に一度もない。


仕事中に楽しみだと、シフトで一緒になる度にケイくんが話してくれる。


ケイくん「私さん、あんまりおしゃれして映画に来ないでくださいね!」


私「えっ!それっておしゃれしてきてっていうこと⁈」


ケイくん「違いますよー!緊張するかと」


私「おしゃれしていこう!」


ケイくん「えー!」


ケイくんとの会話は、本当に恋愛小説みたい。

嬉しくて、何度も思い出すからずっと忘れられない。


映画の公開日前のシフトで、ケイくんがポツリと言った。


ケイくん「やっぱり映画やめときますか?」


私「えっ今更ー!」


ハハハっと軽く笑いながら返したが、本当はぎくりとした。

席の話とか色々した後になって、急におよび腰になる気持ちは分かる。

私もちょっと楽しみすぎて、緊張もしていたから。


私「せっかくだし行こうよ!こんな事滅多にないし。」


ケイくん「そうですよねー、行きましょうか」


ほっとした。


誘われたからではなく、もう私自身が映画に一緒に行く事が楽しみで仕方なかった。


私「映画の前にランチしようか?予約しておくよ?」


ケイくん「そうですね、お願いします!」


私「どんなの食べたい?」


ケイくん「何でも大丈夫ですけど。」


私「うなぎは?」


ケイくん「うなぎ大好きです!母親にもよく食べたいとねだりました。」


うなぎに決定!

ねだってまで食べたいなんて、めちゃくちゃかわいい!


ウキウキしながら、映画館の近くのうなぎ屋に、すぐ予約を入れた。