久しぶりに書いてみました。

 

以前、ロシアのプーチン大統領が国土に外国の軍隊が駐留しているような国々はきちんとした主権国家ではないと語ったことがある。

 

元外交官でロシアに駐在したことのある亀山陽司氏の『ロシアの眼から見た日本』という本でも「ロシアは、アメリカに従属する国としての日本を対等の相手と見なしていない。」と書かれています。

 

一方、ウクライナに侵攻しているプーチン大統領はことあるごとにアメリカの一極支配を批判して多極の世界を目指すと語っています。

 

で、多極の世界を目指すならば、日本やドイツにある米軍の存在は邪魔なはずですが、プーチンはアメリカに対して日本やドイツに駐留する米軍を否定するような発言をしたことはありません。

 

なぜ、そのような発言をしないのかと言えば、彼は現在の国際政治は第2次世界大戦の戦勝国(国連のP5)によって運営されるべきだと思っており、アメリカが敗戦国である日本やドイツに米軍を駐留していることを容認しているのです。

 

現在のロシアから見て日本やドイツはアメリカの勢力圏の一部なのでした。

 

アメリカの方も米ソ冷戦が終了した時点で一部の人々がソビエトが崩壊したことでNATOの役目は終わったのだから、米軍はアメリカに戻ってくるべきだと言っていたものの、それは決して大勢にならずに冷戦が終わった後も米軍は日本やドイツなどに駐留し続けたのでした。

 

すなわちアメリカもロシアも冷戦が終了した後でも第二次世界大戦後の国際秩序を維持していこうと考えていたわけで、そのことに関してはこの2国間で意見の相違はなかったのです。第2次大戦の敗戦国である日本にとっては不満と思える結果でした。

 

問題は米ソ冷戦の解釈で、アメリカは明らかに米ソ冷戦で西側が勝利したと思っており、スティーブン・コーエン元米国大使によればアメリカはロシアを日本やドイツのように「敗戦国」として扱っていると批判していました。

 

ワルシャワ条約機構というソビエトの勢力圏だったものが解散させられ、そこに加わっていたものは徐々にNATOに編入されていきました。さらに、NATO拡大は、ブッシュ大統領(息子)の時代にNATOのブカレスト会議でジョージアやウクライナなどの旧ソ連邦諸国にも適用されることが判明したのでした。

 

結局、ロシアは東欧がアメリカの影響下に入ることは渋々容認しても隣国のウクライナのような旧ソ連邦の一員が西側の影響下に入ることに対して、それを許すことができずに今回の違法な戦争に結びついたものと思われます。

 

米ソ冷戦が第二次大戦の戦勝国の間でのイデオロギーの相違による仲間割れとするならば、今回のウクライナ戦争は冷戦後に起きた第二次大戦の戦勝国による勢力圏をめぐる争いで、それが熱い戦争にまで発展してしまったのです。

 

第2次大戦の結果決められた国際秩序を守っていこうと考えていたロシアとアメリカが争うことは敗戦国の日本にとっていいことなのか、悪いことなのか私には判断がつきかねますが、米露両方にとってそれは思わぬ結果を生み出しそうな気がします。