前回はアメリカの独立宣言と南北戦争をローカルとグローバルの対立という形から見てきたわけですが、どちらの事例もその対立構造がわりとはっきりしていることが確認できたのではないでしょうか?

 

さて今回は第2次世界大戦について考えてみます。

 

アメリカはウィルソン大統領のときに第一次世界大戦に参戦したのですが、この戦争の結末に多数のアメリカ人が失望してしまいました。

 

だからドイツでヒトラーが政権について、ヨーロッパで戦争が始まっても過半数のアメリカ人はヨーロッパの戦争に介入することに反対だったのです。

 

このことで有名だったものにアメリカ・ファースト委員会という当時の大学生が作った組織があります。この組織のスポークスマンを務めていた人が世界で初の大西洋横断を飛行機で成し遂げたチャールズ・リンドバーグでした。のちに大統領となるケネディやフォードもその団体のメンバーだったのです。

 

トランプ大統領がしばしば口にするアメリカ・ファーストの真の意味は第2次世界大戦以前にアメリカはヨーロッパの戦争に介入すべきではないというローカル派の合言葉だったのです。

 

彼らは自分たちの立場を「非介入主義」という言葉で定義していたのですが、後に政治的に反対の立場の人から「孤立主義」というかなり歪められた名前をつけられたのでした。

 

これらの勢力が当時のアメリカのローカルの立場を主張していたわけですが、時の大統領フランクリン・ルーズベルトはグローバルの立場からアメリカがナチスの台頭をアメリカの軍事力を使ってでも抑えなければならないと考えていました。

 

しかしルーズベルト大統領の介入主義的な政策はアメリカ国内で盛り上がらず、いつも世論調査では8割の人々がヨーロッパの戦争に介入することに否定的だったのです。

 

だからこの時代もローカル派とグローバル派の対決で、アメリカのローカル派が勝つチャンスが十分にあったのですが、ローカル派の予測を超えた出来事が起こります。

 

大日本帝国が真珠湾を攻撃してしまったのです。

 

この事件によって戦争に介入することに反対していた8割の人たちの立場を崩壊させてしまいました。

 

この結果、ルーズベルト大統領らのグローバル派が勝利することになり、現在までのアメリカ「帝国」路線が作られる契機となったのでした。

 

しかし日本の真珠湾攻撃から79年経った現在、新たにアメリカ国内でローカル対グローバルの対決が始まり、その結果がアメリカの将来の外交や内政に甚大な影響を与えようとしているのです。

 

続く。