今月の『朝生』は中国問題についてでした。

少し気になった点を書いておきます。

元外務官僚の孫先享さんは以前から日本が田中角栄の訪中時に尖閣諸島の問題は「棚上げ」で合意ができていたのに、日本がそれを無視したために問題が起こったと主張しています。

だからもう一度「棚上げ」すれば、日中関係はうまくいくと主張されています。

一方、孫先氏を批判する人は、日本が「棚上げ」に合意したとする文書は一切ないから、日本が「棚上げ」に合意した事実は無いと主張しています。

これはどちらが正しいのでしょうか。

以前ロー・ダニエルという韓国人の書いた『竹島密約』という大変面白い本を読んだことがあります。

この本は、日本と韓国との間で竹島問題を「棚上げ」にする密約を国交正常化する過程で結んでいたと主張しています。

そして、密約を結んだ当事者が存命中はうまくいくのですが、「密約」である以上いずれ伝達がうまくいかなくなることは避けられません。

韓国においては軍事政権から民主化した時にこの問題が起こります。金泳三政権以後、韓国は「棚上げ」の密約を無視して、竹島に色々な施設を作り出すのです。

おそらく、日中の間でもこれと同様な問題が起こったことが推察されます。

おそらく日中の間で孫先さんの言うように、尖閣諸島の問題を「棚上げ」するという合意はあったのでしょう。しかしそれを正式な文書とすることはなく「密約」という形にしたのです。

「棚上げ」を正式な文書にすれば、それに加担した政治家や外務官僚は「国を売るのか」と詰め寄られ日中の国交正常化に影響が出てしまうからです。

このように考えれば、孫先氏もそれに反対の人も間違っているわけではありません。

ただ大事な領土問題を「密約」で処理しようとしたことが間違いの元だったのです。