朝、職場に行くと張り紙が貼ってあった。
いつもは印字されている職員に向けたお知らせや注意事項が多いのだが、今回はあきらかに様式が違った。手書きで社会人が書く様式ではない。
目を通すと、どうやら私と同じパートの立場が書いた67歳の爺さんが書いた文章らしい。(そもそも、パートの立場で貼っていいのか!?)
読んでみると、自分が普段から思っている不満を主張した青年の主張ならぬ、老人の主張の張り紙だった。ただ、1番何を伝えたいのかがわからない。長すぎて読む気を無くす文章だ。たまらず隣のパートさんに聞く。
「この文章の意味わかります??」と。
そのパートも「とりあえず、この人は文章を書くのが下手なのはわかった」と。そんな話をしていると、満面の笑顔の高学歴若手社員がやってきた。
「すごい文章でしょ??ここまで意味不明な文章問題を僕は解いたことがないです」
そうか、九大出身の君が言うなら私が理解できないのも仕方ない。その若手社員は、聞いてもいないのにペラペラ喋り出した。
「要は何を伝えたいかというと、パートさんは、毎朝アルコールチェックあるじゃないですか。それを正社員も毎朝しないのはおかしいって言い出しましてね。でも、僕たちも車を仕事で運転する前は、アルコールチェックしてるんですけどね。それを正社員もパートと同じように毎朝必ず義務にしろと言ってるんですねー。こっちは、毎晩お酒の量を減らしてるのにって不満らしいです」
説明されても言っている意味がわからなかった。何がずるいのかもわからない。しかも、よっぽど飲まなければ次の日アルコールに引っかかるなんてないけどなぁ…。
「ごめん、説明されても意味不明やわ」と言った。
すると、更に満面の笑みで若手社員は言う。
「つまり、言いがかりですね!!この方は、うちの部長と主任と仲がよくないんです。勝手に自分流でこの方はマニュアル無視してやってしまうので。散々注意されてるので、悔しいから少しでもダメージを与えようと考えた末ですね!!」
はぁ…、なんかようわからんが私の知らない間に人間関係が複雑になっていたらしい。それにしても、なんでこの子は、こんなにウキウキしてるんだろう。
「なんか楽しそうやね…」と話すと、彼は「当たり前じゃないですか!!だって、こんな非常識な事を張り紙にする人がいるなんて面白すぎます。月曜日に部長が出勤してくるので、コレを見たらどんな顔するでしょうね!これは、波乱の幕開けですよ」とニコニコで言っていた。
お前…、結構腹黒いな…。しかも、写メまだ撮ったらしい。これは、ネタにする気満々やな
「働き始めて、こんなに面白いと思ったのは初めてですねー。僕は争いはしませんが、人の争いや喧嘩を見るのは好きなんですよ」と彼は言った。
ニコニコして笑う彼に、「その気持ちを周りに悟られないようにね」とアドバイスしておいた。
巻き込まれた中心の主任は「まず、ビジネス文書の書き方から学んでほしいわ」と言っていた。
老人よ…、人間的にもとても勝てる相手じゃないで…と思ってしまった私であった。