トカゲスと結婚した頃によく言われた言葉


誰に食べさせてもらってるんだ」


私はこの言葉がとにかく嫌いだった




言われる度に悔しくなるし腹が立つ


だから私は子供が生後10ヶ月くらいになったくらいから仕事を始めた


当時は企業研修も盛んな頃で接客マナーや言葉遣いについての研修も多く

有難い事に企業や学校から沢山のオファーを頂き駆け回っていた


トカゲスの性格上、私が外で働くなんて絶対に認めないような気がするだろうが

トカゲスは違った

そういう知的な事をしている妻がいるという事が

外では自慢だったらしい


私も仕事をしている時だけはキラキラとして

違う自分になれるのが嬉しかったし

嫌なことも忘れられた


ただし、仕事のお付き合いや友人との飲み会などは許されない

行けたとしても途中で必ず携帯に電話がかかってくる


「今どこだ」

「誰といる名前を全員言え」

「何時に帰る」

「本当にその場所にいるのか」

「嘘ついてるんじゃないか」

「証拠を見せろ」

「写真を送れ」


どこに居て誰といるかを逐一報告しなくてはならない


しかもしばらく電話を切ってくれない


電話に気が付かず出られなかった時の着信履歴は背筋が凍るくらいの件数だったりする


着信30件 鬼電なんてざら


楽しいより恐怖が勝る


何にも悪いことしてないのに

家に帰るのが怖くてこのまま逃げ出したくなる日もある


機嫌をなだめるように大量の甘い物を買って帰る事にも疲れた


だからはじめから行かないように

何かしらの理由をつけて断り続ける


ちなみに

やむを得ず行く事になった場合

子供はトカゲスの父母のお家にお泊まりする

義理の父母はとっても優しくて大好きだった

義父も昔はコモドドラゴンになってたらしいが

今はすっかり丸くなっている

トカゲスはその遺伝だろうと、義母と私はすっかり同志となっていた

私の味方でいてくれたから心強かったし

ごめんねといつも言ってくれていた


仕事をはじめて数年経った頃

トカゲスのお給料をはるかに超えた月がいくつかあった

いくら稼いだかなんて報告はしないのに

私のカバンや机から明細などを取り出して勝手に見られていた


「俺よりだいぶ稼いでいるんやな」

「お前がいればもう安心だな」


私に生活面までもおんぶに抱っこしようとしている


「誰に食べさせてもらってるんだ」


この言葉が逆転する日が来たけれど

その日からトカゲスは給料を家に入れなくなった


その話になると都合よく暴れるようになる


この男 最低だ

それは知っている

だか改めて言わせてもらう


この男 最低だ



みんたかひめ