☆UAEの政府系ファンド、米クライスラービルを買収 WSJ紙(7・10日経)


 アラブ首長国連邦(UAE)の政府系投資ファンド「アブダビ投資評議会」(ADIC)がニューヨーク市を代表する高層ビル、クライスラービルをドイツ系不動産会社などから約8億ドル(約850億円)で買収することで合意したことが明らかになった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が9日報じた。

 クライスラービルは77階建て、高さ約319メートル。米自動車大手クライスラーが1930年に建設した。光り輝く尖塔(せんとう)として知られ、エンパイアステートビルと並んでマンハッタンの摩天楼を代表するビルとして観光名所になっている。

 ニューヨーク市では5月に、カタールとクウェートの政府系ファンドが米投資会社と共同で、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)が過去に所有していた50階建てのGMビルを買収した。原油価格の高騰で中東マネーは資金力を急速に増している。


 世界勢力の構図がここまで急速に、劇的に変わるとは、いったい誰が想像できたでしょう。たとえ現在の持ち主がクライスラーではないとしても、その名を冠したアメリカの繁栄の象徴ともいえるビルをオイルマネーに買収されてしまったことは、5月のGMビルの時と同様、アメリカ経済の崩壊を連想させる大事件だと思えます。

 今回のクライスラービル買収は、オイルマネー同士のプライドの戦いも連想させますよね。5月のGMビルの時は、カタールとクウェートの政府系ファンド。アブダビとしては、ここらで自国の存在感をなんとしても示さねばとじっと獲物を狙っていたのでしょうね。

 しかし、原油の高どまりが続けば続くほど、短期的にはますます産油国のキャッシュフローが増え続け、この手の買収は増え続けるでしょう。原因はもちろんドルペッグ。ドルを持ち続ければドル安でどんどん資産は目減りするため、何か、形に残るものに投資しなければ・・・。しかし、これ以上、シティーに投資して、含み損を拡大するのは御免だ・・・。と試行錯誤すれば、当然選択肢は縮まり、その中の有力候補として、世界の好立地に位置する優良不動産が浮かび上がるのは当然の話です。

 今後も、アメリカの繁栄の象徴がどんどん買収されてしまうのは目に見えていますが、そもそも、ここまで事態をおかしくしてしまったのはアメリカが自らの金融ビジネスモデルを自爆させてしまったことにあるのです。アメリカから逃げ出したマネーが急激に原油市場に流れ込んだこと。ここに、過大なレバレッジを効かせた投機マネーが混じり、市場に火をつけたことが原因です。そして、このレバレッジこそ、アメリカ自身が生み出した金融工学のたまものなのです。

 今回の事件はしかし、バブル期の日本がロックフェラービルを買収したことを彷彿とさせます。あの後、三菱商事は大変な目に合いましたよね。さて、産油国の場合はどうなるのでしょうか。アメリカがここまでプライドをズタズタにされて、黙っている訳はないような気もしますが・・・。