トンカツ総菜店で有名な井筒まい泉(東京・渋谷)がこのほどサントリーの傘下に入ることを決めた。同社に限らず、同族・オーナー経営企業の間で創業者らが自社株を大手企業などに売却する動きが広がっている。後継者難に加え、国内市場が成熟・縮小する中で中堅規模では生き残れないとの危機感も背中を押している。オーナーが経済合理性を重視、同族経営にこだわらなくなった気質の変化も背景にありそうだ。
井筒まい泉の小出千代子社長は1965年に同社を創業、トンカツ総菜店38店、レストラン7店を擁するまで事業を広げた。すでに77歳。親族に後継者が見当たらず「同じ同族経営のサントリーなら、当社の価値をわかってくれる」と判断、金融機関を通じて譲渡を申し入れた。
☆サムスン、日本企業を買収・新潟県のステンレス加工会社 (1・24日経)
韓国サムスングループの総合商社、サムスン物産は24日、ステンレス加工の明道メタル(新潟県燕市)を買収したと発表した。サムスンは成長維持へM&A(合併・買収)を積極化する方針で、明道メタルの技術力を評価した。日本には、高い技術力を持ちながら原材料高による業績悪化や後継者難に直面する中小企業も多く、外国企業の買収対象となる例が一段と増えそうだ。
サムスン物産は、再生ファンドのフェニックス・キャピタル(東京・千代田)から、明道メタルの発行済み全株式を取得した。サムスングループによる日本企業買収は13年ぶり。買収額は40億円前後のもよう。
このところ、確固たるビジネスモデルでコアな支持基盤を持つ同族企業がどんどん危機にさらされていますね。赤福や船場吉兆はモラルハザードで自滅してしまいましたが、それ以外にも、銀座のコージーコーナーが3月にロッテの子会社となることが決まり、今回もトンカツ惣菜でファンの多いまい泉がサントリーの傘下に入ることを決めました。サントリーは2月中に95%の株式を創業一族から買い取り、三年後をメドに残りも取得して完全子会社とする予定です。持ち帰り弁当や総菜類などの店舗が多いまい泉の買収でサントリーの中食事業への参入が本格化しそうです。サントリーはハンバーガーのファーストキッチンやサンドイッチの日本サブウェイなどを傘下に持っているので、まい泉のカツサンドのブランド力はのどから手が出るほど魅力的だったのでしょう。
少子高齢化の中、さらなる成長が見込めなくなり、創業者がこのように自社株を大手企業に売却する動きがどんどん加速してきました。成長の余地が残っているうちなら好条件の売却資金が得られる他、頼りない後継者に任せるよりも、ブランドを残せる可能性があると見ているのでしょうか。この他にも大東建託やスタッフサービスが最近では同じ動きを見せましたね。
サブプライムの影響でファンドの力が弱まり、一時に比べてMBOが減ってきましたが、その代わりに、創業者自らが大企業に直接株を売るという動きが今後も加速してくると思われます。ロッテやサントリーといった大手企業も事業領域を短時間で広げられ、一からブランドを構築する手間が省けますよね。
ただ、この問題も、突き詰めれば、昨日話題にした、地方の疲弊が関係してくるような気がします。今、地方にあるきらりと光る技術を持った企業が外資に狙われています。2番目の記事にあるように、新潟県燕市の明道メタルがサムスンに買収されてしまいました。これは思ったよりも大変なことだと思います。日本の技術が外国に移転してしまうという意味で。燕市には層層たる技術をもった中小企業が集まっています。ipodをピカピカに磨き上げた東洋理化学研究所は有名ですよね。地方銀行が疲弊し融資が滞り、中小企業が疲弊してしまうと、このように、国内大手企業のみならず、外国企業にきらりとした技術を持った企業や、個性的なビジネスモデルを持つ企業が買収されてしまうのです。これは見落としては絶対にならない日本の重大危機だと感じています。