スイスの金融大手UBSは10日、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に伴う損失で新たに100億ドル(約1兆1100億円)の評価損を計上すると発表した。関連の証券化商品の評価額下落が止まらないためで、累計損失は約1兆6000億円に達した。欧米金融大手の抱える同様の損失額は全体で8兆円を突破、さらに膨らむ恐れがある。UBSは同日、シンガポール、中東の政府系ファンドから130億スイスフラン(約1兆3000億円)の出資など2兆円近い資本増強を実施した。
サブプライム関連の1度の損失計上としては最大。UBSは7―9月期決算で関連損失として約5000億円を計上した。サブプライム関連証券は当初は低格付け商品の評価下落で損失が出たが、今回は「スーパーシニア」と呼ばれる高格付け商品でも格付け引き下げで損失が膨らんだ。同社のマルセル・ローナー最高経営責任者は「米住宅ローンの状況悪化が響いた」と説明している。
☆米ワシントン・ミューチュアル、25億ドル増資(12・11日経)
米銀大手ワシントン・ミューチュアルは10日、25億ドルの転換権付優先株発行による増資と住宅ローン事業の大幅縮小、株主配当の減配を含む資本増強策を発表した。住宅ローンはこれまで年間約2.4兆ドル設定していたが、これを4割減の1.5兆ドルに縮小、同時に全米の住宅ローン事務所336カ所のうち190カ所を閉鎖、2600人の従業員を削減する。 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)危機で、ローンの焦げ付きが増加、資金繰り悪化に対応した措置。
またまた欧州で巨額損失の公表です。UBSは預かり資産が世界最大の資産運用銀行で富裕層向けの資産運用委託先としては抜群の存在感を誇っていました。今回の追加損失は主に債務担保証券(CDO)や最優先格付けの「スーパーシニア」と呼ばれるCDOに対する評価引き下げが原因です。このうち大部分がスーパーシニアに絡む評価減だと見られています。スーパーシニアの信用力を過信し、持ち高を減らさなかったことで、残高を圧縮したドイツ銀行などと明暗を分け、より多くの痛手を被った形になってしまいました。今回のニュースはまだまだサブプライムの出口が見えない暗中模索の状態を浮き彫りにしてしまいましたね。これで欧米金融機関のサブプライム損失は総額8兆円にまで膨れ上がってしまいました。8月当初考えられていた市場の流動性危機が、ここにきて、高格付け債権までもが評価を落とされた結果、銀行の資本が痛み、資本危機(キャピタル・クランチ)という問題にまで発展してしまいました。そしてついに、最後の頼り、政府系ファンドの登場です。国際的金融不安の中、世界で運用資産が3兆ドルに達するとされる政府系ファンドの存在がますます大きくなってきました。今回UBSへの資本参加を決めたシンガポール政府投資公社(GIC)はシンガポールの豊富な外貨準備の一部を1981年から運用、現在の運用資産は約2150億ドル。福岡市のホークスタウンを約1000億円で買収したことでも知られています。今回UBSの資本増強、総額1兆9400億円のうち、GICが1兆1000億円、中東の投資家が2000億円の転換社債を引き受けたとのことです。中東の投資家の詳細は明らかになっていませんが、オマーンの政府系ファンドとの観測が出ています。今回のUBSへの投資で政府系ファンドの欧米金融機関への投資額は総額5.5兆円にも迫るとみられ、サブプライムの波に翻弄され世界経済の力学が根本から変わってしまったように感じます。そして恐ろしいのは、シティをはじめ、まだ多数の金融機関がこのサブプライム関連証券をまだ持ち続けているという事実。まだまだ評価損はこの先、広がっていくかもしれませんね。次の記事にもあるように、米国でもまだまだ金融機関における住宅ローン事業の大幅縮小は続き、融資は大幅に引き締められ、市場の冷え込みは止まらないようです。実体経済もますます冷え込んでくるでしょう。魔のスパイラルはどこで、断ち切ることができるのでしょうか。あっと言わせるような斬新な政策、これが今、市場がいちばん待ち望んでいることでしょうね。