僕は・・・クォン・サンウという人間、である前にクォン・サンウという

俳優を先に出会った。

だけど、映画撮影が終わり、封切られ、互いに別の明日を準備するこの時点で

僕の頭の中に残っているサンウのイメージは、クォン・サンウという

俳優よりも、クォン・サンウという人間が思い出される。


俳優という先入眼よりも一人の息子であり、甥や姪たちの叔父、

一人の弟、すなわち人間味があふれていると・・・・




「青春漫画」のケースティングが確定し、僕は制作準備をしながら

野獣の撮影現場へ行き、クォン・サンウという俳優と初めて対面した。

プンダンにある、野獣のセットで初めて会ったクォン・サンウの姿は

文字通り・・・(笑)野獣だった。


ボサボサの頭にひげ・・・撮影で疲れた姿をはっきりと見て取れたが

僕とイ・ハン監督を現場で向かえるクォン・サンウは礼儀、僕が思っていた韓流俳優、

またはトップスターのイメージとは違った・・・

あまりにも礼儀正しく、純粋な少年(?)のイメージだった。



その短い休憩時間に僕たちは、しばらく「青春漫画」のジファンという役について

監督、僕、そして俳優が話し合った。

すでに「青春漫画」のジファン役にどっぷりとハマっており、大体の

台詞を間違うことなくシナリオをしっかりと認知していた彼の姿から

やはりプロは違うなという感じを受けた。


初めて明かすことだが、青春漫画の最初のシナリオでは

ジファンとダルレは、みんな演劇映画科の学生だった。


あとでまた言及するが、シナリオが修正されることによって

ジファンはテコンドー部のスタントマン志望生に変わり、

ダルレは水泳選手だった(笑)

結局は俳優志望生である演劇映画科の学生として決まったが・・・


テコンドー部を選んだのはクォン・サンウだったと思う。

監督は2バージョン中、本人が希望するバージョンを選ぼうと言い、

クォン・サンウはなんだかアクティブな役を希望した事を覚えている。


そして元のシナリオには、自転車のスタントではなく、

オートバイのスタントの設定だった。

監督が自転車のスタントに変えた理由は色々あるが、

一つは既存のオートバイシーンはあまりにもありふれているというのが

事実であったし、オートバイのスタントをしようと思ったら、当然、本物の

スタントマンを使って撮影しなくてはいけないので、それは劇場の

大画面でクォン・サンウではない他の人が演技している姿を

観客に見せるのはイヤだったし、決定的にはサンウ本人が

あまりにも体を惜しまずに野獣の撮影をしたから(笑)冗談めかして

「監督、僕、今回は体をちょっと惜しみます」(笑)


僕やイ・ハン監督は絶対的に同感した。

基本的に俳優が適当にアクション演技を直接しなくてはいけないという

根本的な考えがあったから、負傷と情熱に体がついてこず、

害になる可能性をあえて排除したかった。

そして、決定的には青春漫画はアクション映画でもないし(笑)


僕たちは色々と話した。

シナリオ、相手役、衣装などなど・・・そしてヘアースタイル。

「監督、ジャッキーに狂ってる子なら、ヘアースタイルも同じにしたら

どうですか?」


「なに?本当か?僕も個人的にそう思ったけど、サンウさんが、そのヘアースタイルに

するとは想像も出来ないからあえて言わなかったんだけど・・・」



ジャッキーヘアーの誕生、そしてひさご頭の誕生は、まさしくこうやって

生まれたのである。

(余談だが、カットする日、美容院へ一緒に行ったんだが、なぜクォン・サンウは

ひさご頭にしても変じゃないのか・・・僕も一言言った、美容師さんとサンウへ)

「この頭がヒットしたら僕もこのヘアースタイルにします」

だけど、このヘアースタイルヒットはしなかった(笑)



短い時間に少なくない映画の話を終え、事務所へ帰る道すがら

僕やイ・ハン監督は青春漫画に対する自信が(もっと)生まれた。


その理由は俳優の情熱的な参与が目に見えたからである。

そして僕やイ・ハン監督は、どうか野獣が早くクランクアップすることを

願って(笑)どうか怪我しないことを願って・・・