まだ妊娠するかしないかの頃、それは起こりました。
彼の次兄が足の指を骨折したのです。
なぜか尋ねると、
「やってもうてん」
と。
まだ18歳の子と暮らしていた次兄は、彼女に激しい暴力をふるっていて、彼女のお尻を蹴飛ばした際に、後ろポケットにアルミ製のタバコケースが入っていたそうで、それを蹴り、骨を折ったそうです。
彼女は押入れから出られなくなり、親御さんが迎えに来て、家に帰ったそうです。
すつかり精神を病んでしまい、お詫びに行く事すら断られてると聞きました。
その後、次兄は彼女と住んだマンションを引き払い、家に残っていたお義母さんと、長兄と3人で暮らす事になりました。
その最中、妊娠している事が分かりました。
まだ別れ話もくすぶっていたし、父が家に帰る様に言っていた事もあり、どうするのか尋ねると、私の顔が余りにも悲壮だったのか、
「産んでくれる?」
と。
入籍する事になりました。
私が妊娠して4ヶ月の頃、彼が入院する事になりました。
日給月給なため、彼が働かなければ、収入は有りません。
そこへお義母さんから電話がありました。
「ちょっとお金貸してくれへんやろか?」
耳を疑いました。
驚きと情け無い気持ちで、イヤイヤお金を用立てました。
1ヶ月の入院中、お義母さんのお見舞いは一度だけでした。
手ぶらで。
結局、私の母がお見舞いに20万ほどくれて、入院費はそれで賄えました。
夫の仕事の保険上、まだ1割負担だったので。
その後家に戻り、マンションの家賃が払えないため、私の実家に引っ越す話になりました。
嫌だったのだと思います。
喧嘩になり、私も言ってはいけない、次兄の事、義母の事を言ってしまいました。
すると、張り倒されて、お腹の上に乗られ、電話のコードで首を絞められました。
子供の事ももう、夫の頭の中には無かったのだと思います。
凄くショックでした。
DV夫。
でも、世に聞くDV夫とは違うんです。
謝ってもくれません。
「誰々はもっと酷い暴力で、嫁の鼻を折った」
とか、
「兄貴はこうだった」
とか、自分より酷い暴力を振るってる人の話をするんです。
それからは、喧嘩すると暴力を振るわれる様になりました。
一度、警察を呼んだ時は、私が抵抗した後を見て、
「奥さんもやったんやろ?」
と、警察の人に言われました。
夫は蹴る事が多く、私の服で隠れる部分しか、蹴りませんでした。
それからは亀の様に丸まって、嵐が過ぎ去るのを待ちました。
その後、2度、骨を折られました。
「女は殴って言う事聞かすもんや」
と、平然と言い放ちました。
確かに、次兄も夫の友達も、女性に暴力を振るう人ばかり、夫の周りに居ました。
でも、世に聞くDV夫の様に、普段は人一倍優しい…なんて事もなく。
でもその頃は、
「私が間違えてしまったから殴られたんだ」
とか
「私が悪いんだ」
と思っていました。
立派な殴られ妻の誕生です。