第九話 ―願―

そっと伸ばした僕の手が肌へと触れる。

吸い付くような柔らかい感覚に口元を緩めてしまう。

ぴくり。目の前の狼――否、今は羊の体が跳ねる。

普通に胸元へ触れただけだというのに敏感に反応する。

彼の意図は未だ明かされていなくて。

冷たい目で彼を見つめる。

徐に指を胸元のとっち近くへと滑らせれば、

ちらりと向けられる視線。

安心させるようにやさしく微笑む。


”あぁ、彼も同じだ”


僕と同じで先のことをわかってる。

だから彼の胸元に二つ光る突起は。

こんなにも膨らんで固くなっているんだ。

触れる直前で手を止める。

勿論、早く触りたいけれど。

触れないのは久しぶりに聞きたいから。

そう、彼の「オネダリ」を。

一瞬戸惑うもおとなしく口を開く彼はゆっくりと言葉を紡ぎだした。


―――二人きりの教室。その中で僕らは。

<続く>
第八話 ―不可抗力―


「今日は、僕の番だね。」

状況に似あわないような優しい笑みを向けて。

これは、貼りつけた笑みじゃない。

自然にあふれてしまっただけ。

目の前のオオカミはと言えば。

頬を真っ赤に染めて。

俯き気味で恥ずかしそうにして。

胸元や腹部は夕日で艶やかに光って。

「狼」じゃなくてまるで「羊」みたい。

1つの想いが心の中で芽生えた。


”不可抗力、だよね”



当初の質問に答える声は聞こえない。

否定が無いということはおそらく、許可。

答えがあっていたことに安堵の息を吐く。

誰が見ても惚れるような美しい体に。

惹かれるように僕はそっと手を伸ばした。

仕方ないよね。

こんなのカルマ君が悪いんだ。


――何時も、悪者は君の役目。


<続く>
第七話 ―異変―


1つボタンを外すたびに面積が増える肌。

季節のせいだろうか。

少し湿った肌はとても艶やかで誘惑しているようで。

全てのボタンをはずし終えれば彼の顔へ目を向ける。

「ほら、できたよ」

一言いえばこくりとうなずいてくれた。

満足してくれたようで一安心。


”彼の全てが僕の物なら――”


一瞬そんな思考が頭をよぎった。

すぐに振り払えば何事もなかったかのような笑みを〝貼りつける〟。

目の前の彼はというと――。

既にこの状況に興奮しているのだろうか

わずかだけど呼吸が乱れ始めている。

普段はこんなことはないのに、なんて考えてみれば

答えは一つしか見つからなかった。

そしておそらく、正しい答え。

相手の目を見据えながら僕は口を開いた。


――教室の外の足音に、僕等は気づいていない。


<続く>
第六話 ―大蛇―


目の前の彼が僕を欲するのは何故。

彼の目に浮かぶ微かな悲しさに僕は何ができる。

必死に思考を巡らせても答えは一向に出てこない。

答えは体が知っているから。

僕らの体が

耳に届く声が

強請るような目線が

僕らの全てを教えてくれる。

彼の趣味かすでにはだけている胸元へと手を伸ばす。

其の儘静かにボタンをはずしていく。

この瞬間にも僕の心臓は張り裂けそうで。

それはきっと目の前の彼も同じで。

「…はやくしてよ」

目の前の口が開かれた。

その声は言葉とは逆でもっと何かを望んでいて。


”本当は何が欲しいの?”


僕等二人、共通の疑問。

この答えだけは互いに自分の心の中に秘めて。

僕は一言だけ言葉をこぼしてボタンを外す手を速めた。

「カルマ君の望むままに。」


―――僕等の想いはもう、窓の外。



<続く>
第五話 ―足音―

宵闇の中で唇を重ねる僕等。

互いに教師に習ったテクを駆使する…。

…などということはしない。

そんなことをしなくてもいいのだから。

僕等の頭の中はすでに―――。

「…ッ、ちょ…カルマ…君、」

突然に抜かれた舌に拍子抜けしてしまう。

此方は既にその気だというのに。

…彼はどこまで僕を虐めれば気が済むのだろうか。

思わず名を呼ぶのは毎回の僕のミス。

本当はこの先、何をすればいいか知っている癖に。


”今日はどんなプレイがいいのかな。”


先のことへと思考を巡らせては相手の服、胸元へ手を伸ばす。

彼の服を脱がせるのは僕の役目。

彼の全身が上気して、僕を欲している。

触れるだけで、最近はいろいろなことがわかるようになってきた。

首元から鎖骨へ。

ゆっくりと指を滑らせていく。

時折小さく反応する彼は、僕を感じている…?


―――銃弾が飛び交う教室の片隅には、大蛇に絞殺される狼の異様な光景があった。



<続く>
第四話 ―作戦と行動―


「…渚君」

再び呼ばれた名前に笑みがこぼれそうになる。

笑っちゃいけないってわかってる。


”さっきから名前ばっかりじゃない。”


そんなことは脳内だけでいい。

言葉に出す間もなく、僕の唇は―――。

「友達」に塞がれる。

僕も目の前の赤髪も男だというのに。

それなのに唇は柔らかくて、荒れていない。

静寂が降り注いだこの教室は隔離されたのだろうか。

外で鳴くはずの烏の声も、木々のざわめきもきこえない。

「…んっ…、ン…」

誘いこむように緩く口元を開く。

そこに入り込んでくる赤いオオカミは…。

くちゅり。絡まる舌でかき混ぜられた唾液が水音を立てる。

あくまで相手を誘うために零した甘い声は闇に吸い込まれた。

脳内で一つの言葉が響いた。


”本当に、誘うための声なの?”


――誰か、僕等の過ちに気づいてくれないかな。


<続く>
「蒼い歌」

曲:めひかり
詞・動画:フラットP
絵:ふらわーらぺ
ボーカル:初音ミク


歌詞

僕の夢はなんだっけ 昔のことなんて思い出せない
何を望んでたんだっけ 止まない鼓動 五月蝿過ぎて
立ち止まったままで 進むことさえ許されなくて
君もそうでしょう? いつか歩んで進んでいく


わかってる わかってるよ
永遠に止まり続けるなんて
不可能なんだって
それでも願いたいんだ 
君と一緒に生きていたい


君は歩いていく 
頑張って伸ばした手はあと1m届かなくて
「待って」なんていくら叫んでも
止まってくれなくて 振り返ってくれなくて
蒼い歌を歌って がむしゃらに追いかけるんだ


追い越せない細い道 限りある時間 減り続けるだけ
「神様僕に時間を」 そんなことは願えなくて
立ち止まったままで 振り返ることも許されなくて
君もそうでしょう? いつか進んで消えていく


知ってるよ 知ってるんだ 
君が選んだ道のその先に
僕がいないことは
それでも願わせてよ
君の隣で歩きたい


君は歩いていく 
頑張って伸ばした手はあと1cm届かなくて
「待って」なんていくら叫んでも
止まってくれなくて 振り返ってくれなくて
蒼い歌を歌って がむしゃらに追いかけるんだ


君は歩いていく 
頑張って伸ばした手はあと1mm届かなくて
「待って」なんて叫ぶより早く
がむしゃらに走って ずっと走り続けて
蒼い歌を捨てて やっと君に追いついたよ
新曲のお知らせ


皆さんこんにちはフラットPです。

はい、今回も新曲のお知らせにやってまいりました。

今回の新曲は


「蒼い歌」

曲:めひかり
詞・動画:フラットP
絵:フラワーラペ

この三人で作成させていただきました。

ニコニコ↓
【ニコニコ動画】蒼い歌【初音ミク】

YOUTUBE↓
https://www.youtube.com/watch?v=OT0jSIqbsqo

ミクちゃん誕生日おめでとうございます。

これで八年目となりました。

これからも美しい歌声を響かせてくださいお願いします。

で日是非今回の曲も楽しんでいただけると嬉しいですっ!

それでは!
第三話 ―溺れたのは…―


「…渚君」

ぽつり。一度だけ呼ばれた名に反射的に顔をあげる。

その先に見える表情には見覚えがあった。

…そう、初めて彼が僕を抱いた時と同じ表情(カオ)

「…どーしたのさ、カルマ君」

どこかにプラスの感情を置いてきたかのようなその表情。

途端に今までの震えや恐怖などどこかへ行ってしまう。

残るのはただ、目の前の「友達」をいつくしむ気持ちのみ。

問いには答えず、訪れる静寂。

夕日はすでに傾いて教室の外からは僕等は陰になって見えないはず。

抱きしめ、密着した身体から鼓動が溢れだすようで。

その感覚に耐えられず、相手の頬へと手を伸ばした。

「ねぇ…、カルマ君」

この場で紡ぐのは最小限の言葉でいい。

それだけで僕等は全てを理解する。

名を呼ぶほどに深くなる静寂の中で、一つの想いが僕の心を食いちぎった。


”繋がりたい。”


目を閉じて相手へと体重をかける。

そうすれば彼は必ず僕を抱きとめる。

…僕の”勝ち”だよ、カルマ君。


―――僕らの間違った関係に、誰も気づいたりしないから。



《続く》

第二話 -陰の中で- 



彼の唇から言葉が紡がれてから何分が経過したのだろうか。


否、自分がそう思うだけで実際はそれほどの時間ではないのかもしれない。

言葉を聞き取れていなかった渚は、既に光が消え見えなくなってしまった目の前の相手へと視線を向ける。



「ごめん。…今、なんて?」



カタカタと小さく震えた唇から問いかける声が零れ落ちた。


そう、いつだって怖い。緊張しかしていない。



…特に最近は、安らげることなどなくなってしまった。

目の前の「彼」は------赤羽業は、変わってしまっていたから。


渚はいつからか、業の視線が友好的なものでないことに気が付くようになっていた。


其の瞳が、視線が、自分を「友人」としてみているものではないことに気が付いていた。

自分の質問にもう一度目の前の彼は応えるのだろうか。



それとも彼は……

考えるべきではないとわかっていながらもやはり考えてしまう。




想像出来うる限りの「最悪の事態」を。




ちらりと相手の様子をうかがっては大丈夫だと自分に言い聞かせる。


唯、自分にとって彼はあくまで友達だと、そう自分に思い込ませてきた。



そう言い聞かせて、思い込むしかなかったのだ。



彼にとっての自分は友達だといえるのだろうか。

「なんでもないよ、…それよりさ、今日も――」


何を思ったのだろうか、彼は突然にそんなことを言い出した。



……僕の質問を無視したのは”同じことは言わない”ということなのだろうか。



そして今突きつけられた要求はおそらく、「いつものコト」。


こくり。小さく頷いて笑みを顔に貼り付ければ立ち上がる。



”この微笑みが偽物だということに気づきませんように”



そんなことを考え乍歩みを進めて相手の胸の中へと納まれば僕は何もしなくていい。



ただ単純に、目の前の「彼」に身体を委ねればいい。



そうすれば、僕たちは今迄通りの「友達」でいられるから。




―――僕たちの此の関係は、この闇が、影が。すべて覆い隠して消し去ってくれるから。



<続く>