Voice2009年6月号『経済常識のウソを斬る!』(宮崎哲弥、若田部昌澄、飯田泰之による鼎談)



 宮崎 (略)構造改革論者からの典型的な批判といえば、「マクロ政策は、本来市場から退出すべき衰退産業を生き延びさせ、潜在成長率を低下させるだけ。持続的成長のためには供給サイドの改革が必須だ」というものです。これで一時的に倒産件数が増え、失業率が高くなっても、そのことで各種リソースが衰退産業から新生産業に移動するのだから、政府は市場の適正な配分機能に任せて、介入すべきではないという。



 飯田「創造的破壊」というシュンペーター的な考えの現代版といえますが、彼の理論は実証的な妥当性が低い。非効率なゾンビ企業が退出してくれるならいいのですが、景気が悪いなかでは財務体力がない会社から潰れていきます。となると結局潰れるのは設立年数が浅く、財務体力もない新産業です。旧産業の老舗ほど、財務体力があるので生き残ります。


 現実に新旧産業の新陳代謝を促すのは、バブルのときこそです。バブルが起こると旧産業は高い賃金が払えず、人手不足による縮小や休業が起きます。そして新産業がどんどん伸びて、人材を採用していく。これが、いちばん簡単で痛みの少ない旧産業の潰し方です。アメリカの開廃業率を見ても、ほぼ景気と一致した動きをしています。





中小企業の開廃業率


政権交代こそ最大の景気対策!


2010年版 中小企業白書
7表 会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h22/h22/html/k870000.html

















日本では1980年代後半に、アメリカでは1990年代後半から2000年代初頭に掛けてバブルが発生しました。


また、イギリスは1992年にインフレターゲットを導入し、93年から15年間、一度も景気後退を経験する事がありませんでした。



経済は安定していた方が成長率が高い というのも踏まえて、ここで改めて潜在成長率のグラフ をご覧いただきたいと思います。